「日韓貿易戦争」で日本が絶対有利とは限らない 安倍首相の「ブチ切れ」は理解できるが・・・

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実際に経済産業省のHPを見てみよう。今回の措置は以下のように説明されている (「輸出貿易管理令の運用について」等の一部を改正する通達について)。

外国為替及び外国貿易法に基づく輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。
こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。(下線は筆者)

つまり今回の措置は「輸出規制」であって「禁輸」ではない。半導体材料を、「お前さんには売れねえ」と啖呵を切ると、2010年の中国によるレアアース禁輸措置と同様、明々白々なWTO違反となってしまう。

経済産業省はこんな風に説明している。2004年以降に簡略化されていた韓国向けの輸出管理の手続きを、それ以前の状態に戻します。韓国はいわゆる「ホワイト国」から外れるので、今後は輸入の際に個別に許可を取らなければなりません。しかし半導体材料を入手できなくなるわけではありません……。仮に関連企業から行政訴訟を起こされたとしても、負けないように予防線を張ってあるわけだ。

もし「不適切な事案」が肩透かしなものであったら?

ところで上記の文言で気になるのは、「韓国に関連する輸出管理をめぐり、不適切な事案が発生した」ことの中身である。「武士の情けで皆までは言わないでおいてやる」的な書きぶりだが、今後、「不適切な事案とは、具体的に何のことなんだ?」との疑問が寄せられることは避けられまい。

そこでぐぅの音も出ないような事実が出てくれば、日本側の勝ちである。例えば北朝鮮やイランへの材料の横流しがあったとすれば、「なるほど、日本の措置はもっともだ」ということになる。ところが韓国側はさほど意に介する様子もなく、「2015年から今年3月までに156件の違法輸出があったが、日本産の転用はない」などと答えている。仮に「不適切な事案」が肩透かしなものであったら、第三国からどう見られるか。「規制強化に政治的な意図があった」という心象を持たれれば、日本外交が失うものは小さくないだろう。

繰り返すが、建前はさておき「ビジネスを武器にして他国に圧力をかける」という発想は、少なくとも今までの日本外交にはなかった。国連安保理やG7の制裁には足並みをそろえるが、少なくとも二国間ベースでは行わない。むしろ「意地悪をされても、仕返しはしない国」であった。今回の措置は、わが国の「通商政策」の転換点となるかもしれない。

半導体産業は、そうでなくとも世界的な逆風下にある。これで韓国企業が打撃を受けた場合、アジアのサプライチェーンを混乱させて日本経済に跳ね返ってこないとも限らない。

ちなみにサムスン電子、ハイニックスなど韓国関連企業の株価は、輸出規制強化措置を受けていったんは下げたものの、「これで半導体市況がかえって回復するかもしれない」との思惑から直近では再び上げている。政治の思惑とは違って、経済はさまざまな要素とともに千変万化する。かくなるうえは、こんな想定が杞憂に終わることを祈るばかりだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が、週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。

次ページさてここからは競馬コーナー。対象レースは函館記念
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