レゴ「子供が求める玩具」見誤った失敗と教訓 アルゴリズムでは「人の心」まで解析できない

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人間には本来、観察する力が備わっています。他人の感情を理解し、何が今重要なのかという文脈を把握できますし、500年前の作品を通じて、今とは違う世界に住んでいる人の感覚を理解することさえもできます。こうした能力を活用することは、アルゴリズムが発達する現代の世界においても、非常に重要だと私は考えます。

ただし、シックデータを手に入れるには、現地に行って観察しなくてはなりませんから、相応の時間がかかります。この点においては、センサーから効率的にビッグデータを得るようにはいきません。ですから、ビッグデータとシックデータはどちらか片方ではなく、両方のいい部分を組み合わせることが大切なのです。

私は、AIを開発する際には、人文科学を理解する人間と、コンピューターサイエンスを理解する人間が共に働かなければいけないと思っています。ビッグデータから正しい情報を抽出することも大切ですし、データを分析し人々の行動や心理を正しく認識することも重要だからです。こうしたコラボレーションは非常に難しい面がありますが、私たちは、つねにこれを試みています。

子ども心を理解していなかったレゴ

シックデータを用いることで、具体的にどのようなことができるのか。これまで私たちが手がけた事例をいくつかご紹介したいと思います。まずは組み立てブロック玩具で知られるレゴです。

2000年代前半、レゴの業績は決していい状況ではありませんでした。そうした状況を受けて、当時新しいCEOとなったクヌッドストープ氏は、「われわれは子どもを理解できていないのかもしれない」といった発言をしました。これはある意味で勇気のある発言だったと言えるでしょう。そんなタイミングで、レゴから相談を受けることになりました。

私たちが受けた依頼は、「子どもたちは、なぜ遊ぶのか」という根本的な問題を調べることにありました。当時のレゴでは、「子どもたちの集中力が低下している」「ADHD(注意欠陥多動性障害)が増えている」「複雑な遊び方が好まれなくなっている」といった製品開発の前提条件が据えられていたのですが、この前提条件が本当に正しいのかを知ろうとしたのです。

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