レゴ「子供が求める玩具」見誤った失敗と教訓

アルゴリズムでは「人の心」まで解析できない

そこで、私たちは子どもたちの観察を行いました。複数の国で、子どもたちの生活ぶりを間近で見せてもらったのです。この過程で、私たちは徐々にレゴによる前提条件の間違いを認識するようになりました。

きっかけは、私たちが関わったADHDの診断を受けた少年との出会いでした。彼を観察していると、靴がボロボロであることに気がついたのです。その理由を尋ねると、毎日スケートボードの技の練習をひたすら繰り返していたからということがわかりました。遊びに夢中になるあまり、靴が磨り減っていたというわけです。こうした事例は、複数の国で発見することができました。

そこで私たちが得た洞察は、「子どもは決して複雑な遊びを避けているわけではない」ということです。レゴは、子どもの集中力の低下という情報から、「遊びはシンプルなものがいい」と信じていたわけですが、それが間違えていたかもしれないというヒントを得ることができました。

この結果を見たレゴのCEOは、「もしこれが本当ならば、私たちの製品の少なくとも7割をやめなければいけない」と言いました。その後、レゴは「Back to the brick」(レンガに戻ろう)というスローガンを立て、レゴの立て直しが始まったのです。間もなくレゴの業績は回復しました。

アディダスの盲点

次の事例は、スポーツブランドとして知られるアディダスのものです。10年前に私たちがアディダスと関わることになった当時、アディダスの執行役員はみんなアスリートでした。その結果、アディダスの製品やサービスには、「スポーツとは勝つことだ」というスローガンが反映されたものになっていたのです。

ある日、そうした状況に疑問を持ったアディダスの執行役員から電話がありました。彼が打ち明けてくれたのは「すべてのスポーツにおいて、勝つことがすべてなんて言っていいのだろうか」「そもそもなぜ人は走るのだろうか」といったものでした。このような経緯で、私たちはアディダスのビジネス拡大に向けてコンサルティングを行うことになったのです。

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このときも、やはり観察をすることによって答えを得ることができました。スポーツをしている少女に会って話を聞いてみると、北米で「リトルブラックドレス現象」というものが起きていることを知ることができたのです。少女たちの多くは小さな黒いドレスを持っており、このドレスが似合う体型を目指してスポーツをしていました。

つまり、彼女たちがスポーツをする目標は、アディダスが掲げていたような勝利のためではなく、ダイエットにあったのです。この洞察をきっかけに、アディダスはファッションデザイナーのステラ・マッカートニーの力を借りて製品開発を進め、「ファッションとしてスポーツウェアを着こなす」という哲学のもとでブランドを再構築することにしました。

レゴとアディダスの事例は、いずれも、ビッグデータではなく、観察から得たシックデータのおかげで洞察を得ることができたというものです。そして、より深い観察を行うためには、人類学や歴史、哲学、心理学といった人文科学の知恵が必要なのです。

【2019年7月26日10時40分追記】初出時、タイトルに誤植がありましたので修正しました。

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