レゴ「子供が求める玩具」見誤った失敗と教訓 アルゴリズムでは「人の心」まで解析できない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

現在、多くのAIの開発はビッグデータを基礎として勧められています。つまり、センサーによって収集した膨大なデータセットを用いて、人の行動などを測定し、あるいは予測する。しかし、実はビッグデータだけでは正確に測定できない場合も少なくありません。そのことを、ある事例を挙げて説明したいと思います。

ここで取り上げるのは、あるトラックの動きをビッグデータにより認識した結果です。データによると、このトラックは過去30分で12回にわたって急停止と発進を繰り返し、最終的に時速0マイルで停車しました。これがビッグデータによる認識ですが、ここからいったい、どういった状況を描写できるでしょうか?

トラックが急停止した理由

答えを知るために、このトラックのドライバーを直接観察し、話を聞きました。すると、このドライバーは自然が好きで、頻繁にトラックから降りて自然と触れ合っていることがわかりました。

頻繁に停止していたのは、自然が恋しかったからなのです。そして、最後に完全に停車したのは、通行の邪魔になっていた倒木をどけるためでした。話を聞くと、このドライバーは倒木を片付けながら、人の役に立てている実感から幸福感を感じていたことを知ることができました。

こうしたリアルな状況を描写するのは、ビッグデータだけでは不可能です。トラックの動き自体は測定することができても、そこに含まれる“意味”を理解する、つまり「センスメイキング」をすることができません。私は、こうした意味を含むデータを「シックデータ(厚いデータ)」と呼んでいますが、本当に物事を理解するには、ビッグデータだけでなく、シックデータも大切なのです。

では、どうすればシックデータを得ることができるのでしょうか? ここではやはり人文科学の知見に基づく“観察”が重要になります。教養学部で歴史などを専攻してフィールドリサーチの経験を持つ人であれば、観察の意義を理解していただけるのではないでしょうか。世界を観察し、人々を観察することによって、意味を理解する。これこそが、人間にとって最も意義深い「センスメイキング」なのです。

次ページばかにしてはいけない「人間の観察力」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事