セブンペイ不正使用と「闇営業」の意外な共通項 対照的だった2つの芸能事務所による対応

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例えば上限金額での入金を短時間に複数回行っている場合や、あるいは単純に決済金額に上限を設けるといった一時的措置を取れば、犯人グループは現金化に四苦八苦したに違いない。

そもそもの不正使用の原因が、システム設計上の不備である可能性が高いうえ、さらに判断の遅れから被害拡大をもたらしたとも言える。

厳しすぎるという意見もあるかもしれないが「どこか他人事のように思える当事者意識に欠けた対応」と思われないようにするには、自分たちがどのように外から見えているのか“客観性”が重要だ。

同様に「客観視」できなかった吉本興業

すなわち、セブン・ペイは一般消費者からの目線、視野がどのようなものなのか、幅広い視点に欠けている。

もちろん、最も悪いのは犯人グループであることは間違いない。しかし、ここはセブン-イレブンというブランドを信頼して利用を開始した消費者の視点、視野を想像し、寄り添った対応をしておくべきだった。

たとえシステムに致命的な脆弱性があったとしても、速やかに適切な行動を取り、非を認め、不正利用に立ち向かう姿勢を明確にしていれば、ワタナベエンターテインメントのような危機対応ができたのではないだろうか。

これは吉本興業も同じだ。

6月28日に吉本興業ホールディングスの大崎洋会長が、自ら闇営業騒動に対する残念な思いを共同通信記者のインタビューで語ったことが伝えられたが、そこには「吉本興業としては残念」という、やはり所属タレントの責任であり、自分たちはどうしようもない、という無力感を訴えるだけにとどまっている。

状況を“客観視”し、自分自身が他者からどう見えているかを考えることは、今回のような危機対応で最も大切な要素だ。とりわけ、ネット社会においては監視の目が強い。

誰かが違和感、不快感を示しただけで、一気に伝播し、自分の意見として取り込んで、あちこちで2次投稿、3次投稿が生まれていく。

俺たちも被害者なのだから、知らんぷりをしていれば、大丈夫。ではない。さらに被害を拡大しないよう、多様な視点から対応に当たる必要がある。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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