日本の「法医学者」を取り巻く何とも厳しい現実 フジ月9「監察医 朝顔」で上野樹里さん演じる

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──解剖ではどのようなことを調べるのですか?

斉藤准教授:解剖は、1日に2件くらい、ほぼ毎日行います。私たちが扱うご遺体は、ほとんどが司法解剖(犯罪死体、または犯罪が疑われる死体を裁判所の許可を得て行う解剖)です。なので、とくに傷の所見が大事で、刺創などは所見が多いため、外表を見るだけでもとても時間がかかります。

その後、頸部から下腹部までを開き、臓器を一つひとつ取り出して調べます。もちろん、頭部も詳細に調べていきます。内臓だけでなく、血管や筋肉も調べます。解剖をしたり、いろいろな検査をしないと死因がわからないということが多いので、解剖の件数は増えてきています。

──東日本大震災は、どのような経緯で被災地に行かれたのでしょうか?

岩瀬博太郎教授(以下、岩瀬教授):日本法医学会を通じて警察庁から出動要請があり、私を含む法医3人と法歯科医3人のチームで、震災が起きた翌日の3月12日に千葉県警の車で陸前高田に向かい、13日の午後に米崎中学校の体育館に着きました。法医チームとしては最初の現地入りでした。

主人公の万木朝顔を演じるのは上野樹里さん。ドラマ「監察医 朝顔」は毎週月曜日よる9時からフジテレビで放送(写真:フジテレビ提供)

そもそも、阪神・淡路大震災のとき、大勢の方が亡くなったので、多くの法医学者が自分たちの判断で駆けつけたそうです。

ところが、大阪まで行ったけれど交通が遮断されていて、そこから先に行く手段がなく、現地に入ることもできなかった。

その苦い思い出を教訓に法医学会としてマニュアルを作っていたので、東日本大震災では行政と手を組みながら組織的な活動ができました。過去の反省は、そこでは生きたんです。でも、被災地で医師としての活動がきちんとできたかというと、そうではありませんでした。

溺死なのか、凍死なのか疑問を持つ中での活動

──現地では、どういう活動をされたのですか?

岩瀬教授:警察が先にご遺体の所持品をチェックし、遺体番号をつけて、検視をします。その後、医師が検案して死体検案書を書くのですが、いっさい解剖ができない中で書かなければならない。あのときは、津波で亡くなった方がほとんどなので、9割が溺死とされました。でも、傷のないご遺体だと、内心では凍死なのではないかと疑問を持っていました。

あとから、陸前高田の避難所で、一晩生きていたけれど、翌朝亡くなっていた遺体があったという記事を読んだときに、ああ、やっぱり間違いだったと。解剖すれば、凍死かどうかわかります。凍死している人が記録にあれば、その後の救助活動も変わってきます。上から布団を落とせば死ななかった人もいたのに、溺死にしてしまったばかりに今後津波が発生した際に布団を落とすという対策が取れなくなってしまう。それが反省点の1つです。

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