もし、老後のために2000万円を貯めようと考えた場合、現在30歳の人なら65歳までの35年間となる。割り算すると年間57万円だ。月額で4万8000円程度になる。結構キツイ金額だ。
しかも、これは老後資金だから使ってはいけない。65歳までコツコツ……なんて、気が遠くなる話だ。その前に、車を買ったり、教育費を払ったり、家のローンを返したりとお金のかかるイベントはたくさんある。だからこそ、60歳、65歳まで使えないお金を優先して固定してしまうのは得策ではない。
今不安になった人が金融機関に相談すると、個人年金などの保険商品を勧められるかもしれない。これらの商品は、たいていが60歳以降まで引き出しできない。老後の備えを優先して、その前に使うべき貯蓄がキープできないのは本末転倒といえる。教育費をローンで借りたり、住宅ローンの支払いが65歳以降も残るようでは、逆に老後に負担が増えるばかりだからだ。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金形成にメリットのある制度だとは思うが、これも60歳まで引き出すことはできない。iDeCoを使うならそれと並行して、老後の前に発生する大きな支出イベントに使うための貯蓄をすべきだ。
老後も心配だが、その前にも心配すべきことはある。くれぐれも、60歳まで使えないお金をやたら増やさないように注意しよう。
投資は運用次第で過去実績より上がりも下がりもする
今回の問題以降、老後資産を作るための投資セミナーが人気だという。うたい文句としては、現役時代から長期で積み立て投資による資産形成をしよう、投資先を分散することでリスクを抑え、安定的なリターンも期待できる、という。いわゆる「長期・積立・分散」である。
ちなみに、なかったことにされそうな金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループの報告書には、もし国内外の株式・債券に積み立てで分散投資した場合、元本100万円が20年後に185万~321万円になっただろうとある(1985年から毎月積み立てたと仮定。過去の実績)。リターンは年率2~8%換算となり、預貯金では期待すべくもない数字のため、金融機関のセールストークで「長期で投資すると増えますよ」と使われることが多い。
『仮に、月に5000円、年6万円の少額拠出であっても、30年拠出し続ければ(累積拠出額180万円)、全期間において年2%の利回りを想定すると、246万円となる』(「高齢社会における資産形成・管理」23ページ)。
投資すると増えるんだ、と素直に感じる人も多いだろう。が、あくまでこれは20年後はこうなっているのではないかという、過去の実績から導いた数字だ。運用次第ではここから上がりも下がりもする。
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