横須賀の海軍カレーが「認知度1位」になるまで 明治時代のレシピを再現し、今年で20周年

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そして、認知度貢献に大きく貢献したのが、市主催のカレーフェスティバルだ。「最初はマンガみたいな話だけど、朝、会場の市役所前公園に電気炊飯器とお米を抱えて行った。いろいろなカレーを食べ比べができるというコンセプトがよかったのかもしれないけど、とにかく次から次へと売れていく。私がカレーを売っている裏で、うちの奥さんが米を炊いているけど、ぜんぜん間に合わない。そんなのが夕方まで続いた」(島森さん)と、懐かしそうに思い出を語る。

カレーフェスティバルは規模が大きくなるとともに、ヴェルニー公園、そして現在は三笠公園へと会場を移していった。

「ほかにも、いろいろやった。例えば市のアイデアでカレーの香りがする名刺を作ったこともある。これをよそから視察に来た人に渡せば、帰ってから話題にしてくれる。くだらないことのようだけど、細かいことの積み重ねが大事だ」(島森さん)

よこすか海軍カレーが大ブレイクするきっかけとなったのは、大手製パン会社から発売された「よこすか海軍カレーパン」ではないかという。大手メーカーの商品名になったことによる宣伝効果はとても大きく、多くのファンの獲得につながった。しかし、このような提携の話がきたのも、地元での細かいことの積み重ねがあったからこそであろう。

ただし、最近はあまりにも名前が売れすぎたことによる弊害も出てきているという。「名前を勝手に使われるケースが増えている。われわれは原則として月1回、商品審査委員会を開き、承認されたカレーだけが、よこすか海軍カレーの名称で販売できるルールにしている。この審査は落とすのが目的ではなく、よいものは残り、悪いものは淘汰されることから、少しでもレベルアップして仲間に加わってほしいという趣旨で行っている。その思いを理解してほしい」(島森さん)

成功の理由は?

「カレーの街よこすか」事業が大きく成功した理由はいろいろとあるだろうが、大きく見れば4つあると思う。

よこすか海軍カレーには、さまざまな関連派生商品が誕生している(筆者撮影)

まずは、海軍の街・横須賀の歴史にあったわかりやすいストーリー展開で、カレーグルメを開発できたことだ。

2つ目は、当然のことながら個々の事業者の努力によるところが大きい。見渡せば、よこすか海軍カレーのレトルト商品はもちろん、カレーチョコやカレーソフトクリーム、カレーマドレーヌ、カレーのカップラーメンなど、枚挙にいとまがないほどの関連派生商品が誕生している。

島森さんの店を見ても、映画『おっぱいバレー』からヒントを得たという「おっぱいカレー」や、小泉純一郎氏が首相に就任したときに販売した「小泉行革カレー」など、話題の商品を次々と開発してきた。

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