地上デジタル放送への移行に暗雲、いまだ世帯普及率50%以下

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 地上デジタルテレビ放送への完全移行まで残りわずか2年半。にもかかわらず、デジタルテレビやチューナーなど受信機器の普及率は、いまだ50%にも満たない--。

総務省は1月下旬、地上デジタル放送の受信機の普及に関する緊急調査を実施。アナログ放送を停止する2011年7月までに約5000万世帯の普及を目指しているが、調査の結果、50%に当たる2500万世帯にも達していないことがわかった。この結果は2月中旬にも公表される見込みだ。

これから追い込みをかけるという段階での“まさかの失速”に、総務省の担当者は動揺を隠せない。ある関係者も「結果を耳にした瞬間、青ざめてしまった」と焦りを口にする。

当初、総務省が公表していた計画では、「普及率50%」は、薄型テレビの需要が盛り上がる昨年8月の北京五輪の終了時に達成されているはずだった。ところが、昨年9月時点での普及率は46・9%。総務省が数値目標を掲げるようになってから、初めて目標を下回った。

年間を通じて最もテレビが売れる年末商戦では、デジタルテレビの販売台数もそれなりに伸びた。にもかかわらず、なぜ普及率が上がらないのか。関係者が渋い顔で解説する。「すでに受信機器を持っている世帯が2~3台目として購入しているケースが多いようだ。そのため、どれくらいの家庭に普及しているかを示す世帯普及率の伸びは完全に止まってしまった」。

総務省が昨年12月に公表した「第9次デジタル放送推進のための行動計画」では、今年3月末時点の目標普及率を62%(約3100万世帯)と掲げたばかり。だが、もはや達成は絶望的だ。

法改正も難航の可能性

折しも、国会では09年度の予算審議の真っただ中。総務省では、「地上デジタル放送推進総合対策」として、単年度で約600億円、今後の対策費総額では2000億円もの支出を見込んでいる。

目玉となるのが、生活保護世帯などNHK受信料全額免除世帯(最大260万世帯)を対象とした、チューナーの無償給付やアンテナ工事の実施。この施策には、来年度1年間で170億円(60万世帯)、3年合計では600億円もの予算を投じる計画だ。

その財源として見込んでいるのが、携帯電話利用者などから徴収した「電波利用料」。ところが、それを実現するには電波法の一部改正が必要になる。総務省は2月3日に改正案を国会に提出しているものの、今回の緊急調査の結果が明らかになれば、物議を醸しかねない。
(中島順一郎 =週刊東洋経済)

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