安倍首相は無謀なアマゾン開発に突っ込むのか ブラジル・ボルソナロ大統領の思惑とは

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アマゾン開発の目的は、木材の採集から始まって、農耕牧畜による肉と大豆の生産を増やすことにある。また、埋蔵している自然資源ボーキサイト、金、鉄、マグネシウム、ニッケル、リン酸、錫、ウラニウム、石油、希少ミネラルといった資源の開発も有望視されている。さらに水力そして原子力発電の建設もテーマとしてある。ボルソナロ大統領はこれらの開発のどれかを、今回安倍首相に提案しようとしているわけである。

しかし、この開発で問題となってくる点が2つある。1つは、アマゾン地帯の開発による破壊が地球の温度化をもたらし、生態系に想像できない悪影響をもたらす可能性が。もう1つは、先住民の保護問題である。

20〜25%が破壊されると大変なことに

ブラジルやコロンビア、ペルーなど南米9カ国にまたがるアマゾンの面積は740万m2と、日本15個分にも相当する。そのほぼ6割に相当する約470万m2がブラジルに広がる森林地帯で、これはブラジル面積の60~63%に当たっており、アマゾンにおけるブラジルの「役割」は大きい。

1970年代のアマゾンの森林伐採などによる破壊はわずかか1%であった。それが1990年には9.6%、2000年には14%そして2017年には19.1%にまで及んでいる。問題は、専門家によると、この破壊が20%から25%に至ると取り返しのつかない地球の生態に悪影響をもたらすことになると指摘している点であると、現地メディアは報じている。

とくに、世界の熱帯雨林の半分以上の面積を占めるアマゾンは温度調整と二酸化炭素を吸収するという重要な役割を果たしているにもかかわらず、1970年代から現在まで、フランスとベルギーの面積の合計に相当する約70万m2もの森林が伐採されている。ルセフ元大統領解任後に大統領に就いたテメル政権の1年間だけでも、7800m2の森林地帯が消失しているのだ。

森林伐採の目的は木材を調達だけでなく、ブラジルの主要輸出品である食肉や大豆を生産するための土地拡大にある。ボルソナロ政権で農業牧畜相に就任したテレサ・クリスチーナは「毒のミューズ」という綽名がついているほどで、農薬企業と密着した人物であるというのはよく知られており、ボルソナロ政権では今後も食肉と大豆生産に力を入れることは間違いないだろう。また、ボルソナロの大統領就任を支えた支援組織の中には自らを「肉、バイブル、銃弾同盟」と称したグループも存在している(ボルソナロ氏はキリスト教の福音派であり、銃規制反対者)。

アマゾン地帯を開発するには、それに合わせて道路の建設が必要となってくるが、これがさらにアマゾンの破壊の度合いを強めている。道路の建設で自然の小川など、水の流れが遮断されるようになり、そこで生息していた魚が従来どおりエサをとりにいけなくなったり、生息ができなくなったということも起きている。また、資源の採掘で化学薬品を使用することによって水が汚染されたことで、そこで生活している先住民の健康に弊害が出ている。

もう1つの問題は先住民の保護だ。アマゾン地帯で生活している先住民の保護地区は600あると言われており、ブラジル国土の13%を占めているという。先住民の人口は約90万人とみられている(ちなみに、1500年代にポルトガル人が侵入したころは300万~500万人いたと推定されている)。

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