安倍首相は無謀なアマゾン開発に突っ込むのか ブラジル・ボルソナロ大統領の思惑とは

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ブラジル政府は、これまで先住民を保護するための予算を組んできたが、その予算が次第に減少している。それに加えて森林の伐採が盛んになり、彼らの生活を脅かすようになっている。鉱物資源の採掘でアマゾンに侵入して来た採掘業者を追い返すだけの力も手段もない先住民は彼らの採掘を受け入れ、その代償として例えばワル保護地区の先住民の場合は利益の10%を受け取ることにした。

ところが、鉱物の採掘で使用する化学薬品などで地質が侵食されてそこを流れていた小川の水がコーヒー色のように変色して先住民の子どもたちが下痢をするようになった。しかも、森林の伐採による影響で気温も5年前と比較して2度上昇して雨量が大幅に減少。このような現象から食料の確保にも問題が発生している。

ボルソナロ大統領の支持率は悪化

これはワル保護地区だけに限ったことではない。多くの先住民が同様の問題を抱えるようになっている。また、開発にくる人との接触が増えたことで、先住民の生活習慣に変化が見られるようになり、先祖の代からの習慣を守らない人たちも出てきている。

ボルソナロ大統領は、先住民を保護するというこれまでの国の方針に些か批判的で、「先住民族がいる土地のその地下には富が眠っている」と発言したほど。実際、先住民を保護する組織「Funai」はこれまで法務・公共安全省の管轄下にあったが、それをボルソナロはあえてアマゾンの開発に積極的な農業省の管轄下に置く大統領令を就任早々に出した。

もっとも6月に入って最高裁がそれを撤回し、その翌日には下院でもそれを却下したということでボルソナロの意向は覆された。

ボルソナロは昨年10月に下院議員の選挙に勝利した後、「先住民の保護地区が私の決定に依存するだけであれば、彼らの保護地区はもう存在していない」と発言しており、先住民の存在がアマゾンの開発の障害になっているという考えを持っている。

Ibope世論調査によると、ボルソナロ大統領が就任してから3カ月で支持率は67%から51%に落ちた。一方、同大統領を支持しない率は21%から38%に上昇。信頼率も1月の62%から49%に落ちている。現在も彼の支持率に下降はあれど回復はない。さらに、36%のブラジル国民は、ボルソナロ政権は「悪い」、あるいは「非常に悪い」と回答しているという。

ラテンアメリカ最大の経済大国ブラジルはボルソナロが大統領に就任してからも依然景気の低迷は続いている。「アマゾン開発で一発あてたい」と考えるのも無理ないのかもしれないが、安易にこの計画に乗るのは危険でしかありえない。

白石 和幸 貿易コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事