トランプ「日米安保破棄」発言の真意は何か 安保破棄で「財政危機」「核武装論」が浮上する

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トランプ大統領の今回の発言もこれまで同様、補佐官らと入念に意見交換をし、緻密に計算したうえでのものではなさそうだ。おそらく何かきっかけがあったのだろう。タイミングからしてそれはイラン問題であろう。

安倍首相がイラン訪問中の13日、ホルムズ海峡で日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーが相次いで攻撃を受けアメリカ軍が救出した。アメリカは攻撃したのはイランだと主張している。

20日にはアメリカ軍の無人偵察機をイラン軍が撃ち落とした。翌21日にはトランプ大統領がツィッターに、アメリカ軍が報復措置としてイランの3か所の攻撃を計画したが、150人の死者が出ると報告を受けたトランプ大統領は攻撃開始10分前に停止した、と書き込んだ。だからといってアメリカが何もしなかったわけではなく、アメリカ軍がイラン軍のミサイルシステムに対するサイバー攻撃を行ったと報じられている。

駐留米軍経費を負担すれば、核武装も認める

イランとの間の一連の動きは緊張感溢れるものであったろう。攻撃されたタンカーが日本の海運会社が運航していたこともあって、トランプ大統領のいら立ちが日本に向けられたのかもしれない。

しかし、それだけでは済まないだろう。2016年秋の大統領選に当選した当時、トランプ大統領は「日本は駐留米軍の経費を100%払うべきだ。そうしないならアメリカ軍は撤退する。その代わりに核武装を許してやろう」という発言をしており、考えは一貫している。ただ、だからといって日米両国政府間で日米安保条約の破棄が正式な交渉テーマになることはおそらくないだろう。

G20首脳会議出席のため日本を訪問するという直前の発言は、やはりトランプ大統領一流の、最初にきついことを言って相手をひるませて、その後の取引を有利に進めるという、ビジネス風の交渉スタイルが出ているのかもしれない。

参院選後には日米間の貿易交渉が本格化する。2020年には在日米軍の駐留経費の日本側負担の見直しをめぐる交渉が本格化する。こうした交渉を前に、「日米安保条約破棄」で日本を少々慌てさせておけば、譲歩を引き出しやすいと考えているのかもしれない。「経済」と「安保」を分けて考えないトランプ流交渉術である。日本にとって厄介な交渉になるだろう。

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