所有率世界7位、スイスで銃乱射を聞かない意味

東大の学生と国際政治の根本について考える

小原:この2つの国の比較からわかるのは、同じ銃という「力」を持ちながら、その「力」によってどんな「秩序」を実現するのかという「価値」観の違いが存在しているということだ。自分の安全か、国家の安全か。その背後には、国家と個人との関係、社会に対する認識などがある。

これを国際社会に置き換えてみるとどうだろうか。国家が有する軍事力は本来、「国家の安全を守るため」であって、国際社会の安全を守るためではないというのが基本的な考え方だ。つまり、「自衛権」というアメリカの銃に対する考え方と同じということになる。

厚木:日本国憲法第9条も、自衛権は否定していないというのが日本政府の立場です。

スイス的「価値」観に立って考える

小原:でも、銃は自分を守るためではなく、自らの属するコミュニティ(国家)を守るためであるというスイス的「価値」観に立って考えたら、軍事力は「国際社会の平和と安全のためのもの」ということになるよね。みんなの平和、すなわち「世界平和」を守るという目的を誰もが共有して、そのために軍事力を持つ、あるいは軍事力を使うという状態になれば、国際社会の秩序はずいぶんと違ったものになるんじゃないかな。

霞が関:残念ながら、スイスのアナロジーは国際社会には当てはまらないし、将来そうなるという期待もできないと思います。スイス人が国家に対して抱いているような忠誠心を、利害がてんでバラバラの国家が国際社会に対して抱くことはできないだろうからです。

万が一の可能性があるとすれば、すべての国家の存続を揺るがすような地球規模の重大な脅威が迫っているような場合だけでしょう。けれど、そんな明確で巨大な「共通の敵」はいまだ現れていないですよね。したがって、すべての国家が世界平和のために軍事力を持ち、それを提供するということは、現時点では考えにくいと思います。

小原:ここでもやはり、地球上のすべての国家が認識を同じくする「共通の脅威」がなければならないという問題に突き当たるようだね。

ただ、国際社会のための軍隊がまったく考えられなかったわけではないし、それに近い軍隊も現実に存在してきた。1つは、国連の集団安全保障だ。国連加盟国が「国際の平和及び安全の維持に必要な兵力」を安保理に利用させることを約束する(国連憲章第43条)という規定がそうした軍隊を意図したことを物語っている。

ただ残念ながら、そのための協定が結ばれていないから、国連の集団安全保障は機能してこなかったけれど、それを補う形での「平和維持活動(PKO)」は、世界各地で実績を積み上げてきた。

「ブルーヘルメット」と呼ばれる平和維持軍は、国際社会の平和のための軍隊だと言っていいだろう。日本も自衛隊を世界各地に派遣してPKO活動に積極的に参加してきた。これは、自国の軍隊を自衛のためではなく、国際社会の平和のために使っていると言えるのではないかな。

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