所有率世界7位、スイスで銃乱射を聞かない意味 東大の学生と国際政治の根本について考える
青山:スイス人の留学生から聞いたのは、小さい頃から銃の使い方を教わる機会があるということです。銃にはどんな威力があって、どんなときに使うべきものなのか。日本の小学校で横断歩道の渡り方を教わりますが、それと同じで、幼少期からルールとしてたたき込まれていれば、大人になってからも悪用しなくなるのだと思います。
文化に根づいている
小原:教育の役割についての指摘だね。実際スイスでは、1600年代から現在に至るまで、「クナーベンシーセン(少年による射撃)」という大会が毎年開催されている。この絵はその広告だ。
初めは少年だけだったんだけど、その後は少女も参加できるようになったみたいだね。軍用ライフルで射撃の腕を競い合い、優勝者は「射撃の王様」、あるいは「射撃の女王」と呼ばれるんだとか。つまり、スイスでは子どもの頃から銃に親しむ文化があるということだね。
それにしてもなぜ、スイスにはこうした文化が根づいているのだろう。皆も知っているように、スイスは永世中立国だ。つまり、スイスはどんな国とも戦争しないし、またどんな国同士の戦争にも首を突っ込まないということを、国際社会に対して宣言している。
したがって、他国と同盟を組んだりNATO(北大西洋条約機構)の一員として集団的自衛権を行使したりすることもできないから、他国に侵略された場合には、基本的には自力でそれを阻止するしかないということになる。
それゆえ、スイス人には「祖国を守る」という意識がほかの国に比べて一段と強く備わっていると言われている。当然、祖国を守るためには武器が必要であり、彼らにとって銃の所有は「国民としての義務」を果たすためということになる。
イギリスのBBCはかつて、「アメリカ人は自分の護身のために銃を持つが、スイス人は国を守ろうという意識が強いから銃を持つ」と報じたことがある。これは、両国の銃に対する価値観、そしてそれによって生まれる社会秩序の違いを的確に表現した言葉だと僕は思う(※)。
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