チケット不正転売が厳しく禁じられた真の意味 自由経済活動でもあり創意工夫も必要だ

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技術革新によって生まれた情報社会や新しいビジネスモデルによって提起された法的問題については、法規制と自主規制の中間にある「共同規制」によって対応していこうとするのが、EUを含めた先進国における最近の潮流である。

求められるのは業界全体での創意工夫

そうした中で、法規制と並行して進める必要があるのが、業界における創意工夫である。すでに一部進められているものの、顔認証、携帯電話の個人認証、ブロックチェーンなどの技術を使って厳格かつ効率的な本人確認を進めるべきだろう。テクノロジーを駆使すれば法規制に頼らずとも、適切にチケットの流通をコントロールすることができるはずだ。

また、転売業者がはびこる原因としては、チケットの定価と市場価格との間に乖離があることが大きい。たとえ高額の代金を支払ってでも見に行きたい人がいる場合、入場エリア、入退場順序の優先、特別グッズの優先販売などの各種特典をつけたプレミアムチケットを販売するなど、価格設定を柔軟に対応することは海外では当たり前のように行われており、これに習うところは大きい。

さらに、販売状況によって価格が変わっていくようなシステム「ダイナミックプライシング」を入れることも一案である。例えばホテル宿泊料や航空券については、繁忙期か閑散期なのか、平日か土日なのかなどによっても価格が大きく変動しており、さらには直近の販売状況に応じて価格が変更されるのである。

こうした需給を反映したレベニューマネジメントを行うことは経済的には極めて合理的であり、ユーザー側にも一定のメリットがある。どうしても興行の場合は、ファンからの反発を恐れてしまうのかもしれないが、一考の余地があるだろう。

最後に、適法な転売が可能な場として、公式の転売サイト「チケトレ」が提供されているものの、手数料が高いことや、発券済みのチケットの場合公演日より10日前までに出品する必要があるなど、現状では決して使い勝手がいいとは言えない。

実際にチケットを譲渡する必要が生じた場合のサポートとしては、複数の選択肢の存在によって競争原理が働くという前提で、公式サイトのみならず、さまざまな転売サイトが存在することが望ましい。また、チケット不正転売禁止法に基づき定価でしか転売することができないのだが、そうであるならば、そもそも市場価格との乖離を埋めるような施策も併せて検討されるべきだろう。

実際にチケット不正転売禁止法では、興行主に特定興行入場券の不正転売の防止等に関する措置を講ずる努力義務を負わせている。法規制の上にあぐらをかくのではなく、自助努力によって社会全体の合意形成を行っていく必要があるだろう。

田上 嘉一 弁護士、弁護士ドットコム取締役

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たがみ よしかず / Yoshikazu Tagami

こちらも早稲田大学法学部卒、ロンドン大学クィーン・メアリー校修士課程修了。陸上自衛隊三等陸佐(予備自衛官)。防衛法学会、戦略法研究会所属。大手渉外法律事務所にて企業のM&Aやファイナンスに従事し、ロンドン大学で Law in Computer and Communications の修士号取得。知的財産権や通信法、EU法などを学ぶ。日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」や企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」の企画運営に携わる。TOKYO MX「モーニングCROSS」などメディア出演多数。

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