チケット不正転売が厳しく禁じられた真の意味 自由経済活動でもあり創意工夫も必要だ

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大量のメールアドレスを自動作成し、会員登録。自動的にデータを入力するbotと呼ばれるプログラムを用いて、1秒間に数百回もアクセスして予約する手法や、専用アプリを用いて予約窓口に断続的にかけ続け、一般利用者からの架電をブロックする手法などを用いて、チケットを買い占めたうえで値段を釣り上げて暴利を獲得するようなやり口が横行した。

こうした「転売ヤー」が、TVCMによって大々的に展開していた「チケットキャンプ」などの転売サイトを利用することによって、チケットの2次流通市場は大きく歪んでいった。

他方で、前述の通り、現在ではチケット転売の多くがインターネットを通じて行われるのだが、ネット空間が「公共の場所」に当たるかどうかは議論があり、警察はこれまでネット上の転売を迷惑防止条例で摘発することには慎重だった。

2017年5月には、人気グループ「EXILE」のチケットを転売目的で購入した男性が逮捕されているが、このときはコンビニエンスストア内における端末で購入した行為が被疑事実として逮捕されている。ネット上の購入を摘発することができないために苦肉の策が用いられたことがよくわかる事例だ。

一方で、迷惑防止条例から一歩踏み込んで詐欺罪を適用した事例もある。2016年には、「サカナクション」のコンサートの電子チケットを転売目的で取得した男に対して、神戸地裁が詐欺罪の成立を認め、懲役2年6カ月・執行猶予4年の判決を言い渡した。

詐欺罪は、罰金刑はなく最大で10年の懲役という非常に重い刑罰となるうえに、迷惑防止条例と違って転売チケットを購入した者も別の犯罪で検挙可能となり、転売サイトのような仲介業者も共犯とできる点が大きい。

実際に、2018年には、チケットキャンプの運営会社社長らも、転売業者と共犯関係にあるとして書類送検されており、結果的にチケットキャンプは2018年5月末でサービス終了に追い込まれることとなった。

他方で、詐欺罪が成立するためには、あらかじめ転売の目的を有していたことを立証することが必要である。

これらの法規制がいずれも一長一短なのは、チケットの不正転売そのものを取り締まるものではないためである。そこで今回、チケット不正転売を正面からターゲットとした法規制が作られたというわけだ。

それでも依然として残る曖昧な部分

それではチケット不正転売禁止法が成立したので、万事解決に向かうかというと、コトはそう簡単でもない。

現実に、チケットを取っていても急用で行けなくなることはありうる。その場合にインターネットを通じて転売することができれば、売り手にとっても買い手にとっても、興行側にとっても望ましいことであることは間違いない。

そうした場合、チケット不正転売禁止法では、あくまで「業として」不正転売することを禁止しているので、1回限りの転売行為は規制対象とはならない。しかし複数回繰り返していった場合にどのように判断されるかは依然として不明である。

また、現行法では、定価を1円でも上回る価格で譲渡すれば不正転売となる可能性がある。チケットと何かのグッズを抱き合わせて譲渡したり、実費を超えるような手数料を付加したりすることも、実質的な判断により不正転売となる可能性が高い。

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