貧困地のアフリカで携帯電話が大繁栄した理由 「無」消費の中に創造するチャンスがあった
通りには腹を空かせた子ども。清潔な水も下水処理もないスラム街。職にありつけそうもない大勢の若者。
世界銀行によると、今も7億5000万人が極度の貧困にあり、1日1.90ドル(約200円)以下で生き延びる生活を強いられている。貧しい国のこうした姿に私たちは胸を痛め、何とか助けたいと思う。
だが、飲み水など目に見える問題を解決しようと資金を投じ、貧困国を直接支援しようとする試みは、支援する側が期待したほどの成果は挙がっていない。長年にわたって巨額の資金が貧困問題に振り向けられてきたが、進展の歩みはのろく、方向がずれているのではないかという疑念が頭をもたげてくる。資金を投じればたしかに一時的には問題が緩和されたように見える。しかし根本的な解決ではない。
目に見える問題ではなく持続する繁栄の創出を
違うレンズで見てはどうだろう。目に見える貧困のサインを正そうとするのではなく、持続する繁栄を創出するほうに力を向けるのだ。これまでの経験や直観とは反する行動に映るかもしれないが、そこには思いがけないほど大きな機会が眠っている。
1990年代にモ・イブラヒムがアフリカに携帯電話会社をつくろうと思い立ったとき、正気の沙汰ではないと言われた。イブラヒムは振り返る。「多くの人に説得された。アフリカでまともなビジネスができるはずがない。独裁者がごろごろいるし、身の危険はあるし、しかも腐敗だらけだと」。彼のアイデアを文字どおり多くの人が嗤(わら)ったのだ。
かつてブリティッシュ・テレコム社で技術責任者を務め、当時自身のコンサルティング会社を経営していたモ・イブラヒムは、大半が電話を所有していないどころか、使ったことさえないサブサハラ(サハラ砂漠以南の)アフリカに、自らの手でゼロからモバイル通信網を構築したいと考えた。アフリカ大陸には54の国があり[数え方によっては56 ]、モロッコの市場から、ヨハネスブルグの多国籍企業に至るまで多彩な顔をもつ。
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