スバル「5代目フォレスター」発売1年の通信簿 販売構成比率はガソリン車よりHVのほうが上

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5代目の現行フォレスターで目新しいのは、ハイブリッドのe-BOXERの存在だ。水平対向4気筒エンジンと変速機の間に薄型のモーターを挟み込み、若干のモーター走行を可能にしながら、エンジン出力をモーターで補って、加速と燃費を改善するハイブリッドシステムである。

大きな荷室はフォレスターの特徴の1つだ(撮影:風間仁一郎)

水平対向エンジンは、どうしても燃焼室の径が大きくなりがち(ビッグ・ボア)で、燃費を改善しにくい傾向にある。またそれは、ピストンストロークが短い傾向(ショート・ストローク)をも示しており、ことに発進の際など低回転域でのトルク不足を生じやすい。そこを、低速から大トルクを出す特性のモーターに助けられる意味は大きい。

先に、XVでこうしたハイブリッド化を行っているが、その当時はスバル自身もあまり積極的な訴求を行っておらず、今回のフォレスターのように主力動力の1つに位置づけられるのは初めてのことになる。

スバル車に対する消費者の意識も変化

消費者の期待もここにきていよいよ高まったとみえ、e-BOXERとガソリンエンジンの販売比率は、55:45とのことで、ハイブリッド車が勝ることになった。スバルが永年にわたり特徴としてきた水平対向エンジンと4輪駆動の組み合わせは、求める性能として低重心と4輪駆動力制御があり、このことはバッテリーを床下に搭載し、エンジンより緻密な制御を行えるモーターを使う電気自動車(EV)でより達成可能だ。その道筋に、今回のe-BOXERは位置しているといえる。

こうした顧客の意識の変化は、人気の装備を見ても明らかになりつつある。販売の現場では、運転支援技術としてのアイサイトや、歩行者エアバッグなど安全装備への評判が高いという。また、公的機関として安全を評価するJNCAP(自動車アセスメント)による2018年の評価において、歩行者エアバッグの装備により衝突時の歩行者保護で一段高い評価を受けたフォレスターは、大賞を受賞している。

これまで、スバリストと呼ばれた愛好家たちは、伝統の水平対向エンジンや、世界ラリー選手権(WRC)などで活躍したターボエンジン、そして4輪駆動への憧れを最大にしてきた。だが、近年のスバル車の購入者の視線は、安全性に大きく傾いてきている。そのうえで、EVへ向けた電動化は、アイサイトなど安全性を含めた運転支援性能を飛躍的に高める可能性も秘めているのである。

フォレスターの販売動向は、そうした時代の変化と社会的な要求、また顧客のスバルへの期待の変化といったことも、示しているといえそうだ。

もう1つ、フォレスターで関心の集まる装備が、4輪駆動制御のX-MODE(エックス・モード)である。X-MODEとは、4輪の駆動とブレーキを制御することにより、未舗装の悪路でもタイヤを過度に滑らせることなく的確に安定した走りを確保する機能である。

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