労働組合は本当に労働者の味方か? 問われる存在意義《特集・雇用壊滅》
「反貧困」参加に批判続出 影薄いナショナルセンター
組合関係者の間では、産別組織としてのゼンセンに対する評価は高い。ほとんどの産別が単産の集合にすぎないのに対して、かつて産別の方針に反した巨大単組の鐘紡を除名したような武勇伝も残る。現状維持に汲々とする産別が多い中、新たな産業や非正社員の組織化に貪欲に乗り出す行動力を評価する向きもある。
ただ「ゼンセンは入り込もうとはするが、つながることはしない」というのも衆目の一致するところだ。ゼンセンもその点は率直に認める。「われわれは派遣村のようなことはしない。不特定多数を助けるようなことはやらない。われわれはあくまで産業別組織であり、組織化した集団型交渉での改善を目指す。派遣村のような社会的な取り組みは連合が行うべきことだ」(橋本副書記長)。
もっとも、連合内でも反貧困ネットワークなど他の社会運動との連携に否定的な意見は少なくない。昨年3月、連合本部が「反貧困フェスタ2008」に参加し、高木会長がシンポジウムに出席した件でも、三役会を含め組織内で批判が続出。10月の集会には参加団体として名を連ねることも高木会長の出席もなかった。1月2日、高木会長は派遣村を訪れたが、参加をアピールする政治家と異なり、お忍び色が強かった。
こうした姿勢に前連合会長で労働者福祉中央協議会の笹森清会長は「100年に一度の未曾有の危機なら、100年に一度の大同団結で取り組むべきだ。非正規問題や反貧困運動に連合が全面的に出てこないのは極めて残念」と語る。
「非正規切り」問題の議論が深まる中、1月9日に電機連合の中村正武委員長が製造業派遣の禁止に反対の意向を示した。「多様な働き方を求める人は大勢おり、尊重すべき」「禁止すると国際競争力がなくなる」というのがその理由だ。1月20日、元連合大阪副会長の要宏輝氏が提起した訴訟で、偽装請負問題を企業名を名指しで批判した要氏の論文に対し、電機連合が抗議していたことが明らかとなった。抗議を受けて連合大阪は、連合傘下の組合を有する企業名はよほどのことがないかぎり匿名にするとの謝罪文を提出したという。
高木会長は常々、今日の格差、貧困問題の責任は「企業が主犯だが、労働組合も従犯」と発言、労働組合の自己変革の必要性を説く。が、これまで述べてきたような有力産別の発言や行動が、本当に労働者のためになるのだろうか。
昨年末、大分キヤノンが募集した期間工の求人票に「労働組合は加入対象となりません」と記されていたことが問題となった。連合は強く批判したが、足腰が定まらぬようだと、典型的な不当労働行為すら横行しかねない。労働組合運動も正念場を迎えている。
(週刊東洋経済)
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