労働組合は本当に労働者の味方か? 問われる存在意義《特集・雇用壊滅》

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ユニオンショップで組織化 不当労働行為との命令も

昨年2月、紳士服のコナカ各店舗に、UIゼンセン同盟コナカユニオンの結成報告や規約、暫定労働協約などが郵送されてきた。手にした従業員が驚いたのが「暫定労働協約」の3条だ。「会社は組合に加入しない者および組合より除名された者は原則として解雇する」とある。さらに1条には「会社はこの組合が労働条件に関する唯一の交渉団体であることを認める」とも。これでは、この組合に入らないと解雇されると理解するのが通常だ。

だがコナカには、すでに1年前に全国一般東京東部労組コナカ支部が結成されている。同労組はいち早く店長への残業代不払いを問題視。日本マクドナルドの例と並んで、「偽装管理職」問題として大きく社会問題化した。この結果、不払い残業代13・7億円の支払いなどの成果を上げた。そうした成果を根こそぎさらわれてしまった格好だ。

「君の組合を売ってくれないか」。00年9月、介護サービス会社コムスン(当時)の樋口公一社長は、結成された労組の委員長に切り出した。委員長が拒否すると、「明日から戦争だ」と告げた。翌日から組合活動の中心だった九州事業部に「UIゼンセン同盟日本介護クラフトユニオン」と名乗る職員が乗り込んできた。同時に、約1万人の全従業員の個人宅に会社封筒で、このクラフトユニオンコムスン分会の加入用紙が郵送され、社長の推薦状も同封されていた。

こうした組織化が不当労働行為と認定された例もある。05年11月、置き薬販売の明星薬品の社員6人が、社長の指示でゼンセンの組合員と労組の結成についての会合を持った。当時、複数の社員が地域労組の天六ユニオンに加盟し、労使対立関係にあった。社員が新組合結成は社長からの要請かと問うと、ゼンセン組合員は「平たく言うとそのとおりです」と答え、天六ユニオン排除が狙いだという点も認めた。大阪府労働委員会は以上の事実を認定し、「会社は組合の弱体化を図るため、社外労組に支援を求めて、新たな労働組合の結成に関与したものといえ不当労働行為だ」と結論づけている。

札幌市で老人ホームを運営する社会福祉法人ノテ福祉会では、理事長が経営する老健施設の事務長を委員長として、ゼンセンが組合を結成。すでに存在した札幌地域労組の支部を施設長など幹部総出で切り崩していった。北海道地方労働委員会は「(ノテ福祉会は)UIゼンセン同盟オール・ノテ・ユニオンの組織拡大を支援したり、同組合を美化したり、職務上の立場を利用して職員を同組合へ加入させる行為を容認するなどしてはならない」と命じた。

ゼンセンの組合立ち上げの特徴的なパターンは「唯一の交渉団体」「加入しない者・除名された者を解雇」(ユニオンショップ協定、以下ユ・シ協定)と明記した暫定労働協約を社員に提示し、時には職制も活用して組織化を進め、過半数を握ったら会社と正式に労働協約を締結し、名実ともにユ・シ協定を獲得するというものだ。

ユ・シ協定を“活用”した組織化に関して、近畿大学の西谷敏教授(労働法)は、「解雇の脅威によって労働者に組合加入を強制することは、個人の自由を保障する憲法の基本理念に反する」と批判する。判例法理によって、他労組に加入している者を解雇することはできないとされるが、「事情を知らない従業員には依然脅威だし、労組の圧力で実際解雇に踏み切ってしまうケースもある」(西谷教授)。コナカでも社員からユ・シ協定に関して不安の声が上がったが、ユニオンは同制度の意義を説くにとどまった。またJSGUのグッドウィルエンジニアリング(当時)分会の組合員が脱退しようとすると「ユ・シ協定を締結しているため脱会できない」と告げられた。

こうした批判に対し、橋本副書記長は「組合の作り方を問題にするよりも、できた後にどうやって労使対等な関係を作れるかが重要だ」と意に介さない。だが「できた後」の対応にも不満の声が上がる。

派遣会社CSIの技術者の男性は、昨年11月、次の派遣先が見つからず「待機」状態にあったとき、上司からパワハラを受け退職届を書かされた。JSGUに電話相談したものの、たらい回しにされた揚げ句、「上司にもう一度相談したら」と助言されただけだった。また今年1月、JSGU高木工業分会は組合員に対して、経営が厳しいため慣れない仕事や嫌な仕事であっても引き受けるよう提言、「間違っても他の労働組合に駆け込まないで下さい。不幸な結果を作るだけです。何の解決にもならないばかりか、次の就職にも悪影響がでます(本人の将来を台無しにします)」と“助言”までしている。

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