日本電産は個別最適から全体最適へ変わる 永守社長に聞く、日本電産の生きる道(上)

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日本の企業のほとんどが管理者経営になってしまっている。中には立派な方もおられるので「サラリーマン社長が」とは一概に言えないが、基本的には管理者経営だろう。1期2年とか2期4年とか、経営者にとどまる期間が決まっている。

だから、嫌なことはできるだけやりたくない。せっかく社長になったのだから、穏やかに生きたいと、悪いものは避けようとする。悪いことは先送りばかりするから、どんどん悪くなる。

ながもり・しげのぶ●1973年に28歳で日本電産を設立。積極的なM&Aで、これまで45社をグループ化。再建請負人の異名も。

日本の場合は本当のプロの経営者がいない。プロの育成は若いうちに鍛えなければならない。ただ、経営というものは経験を積めばできるものではない。経験値もある程度は必要だが、それだけではない。

たとえば、ノーベル賞を受賞した人たちを調べてみると、年を取ってからもらう人が多いが、受賞研究は30歳代くらいでやっている。30代とか40代前半でやった研究が、その後、認められて受賞している。

会社の経営も同じ。経営の理屈もあるが、要は売り上げを増やして経費を最小するなど、理屈は非常にシンプル。誰がやっても変わらない。それをいかに実地訓練でやらせるかということに尽きる。

――経営者には素養より素質が必要ということでしょうか。

素質が重要だ。頭ではない。経営者がやることは何かといえば決断。しかし、それ以上に大事なのは人心掌握だ。

たとえば、京セラの稲森和夫さんがJAL(日本航空)を再建させたとき、飛行機のことはご存じなかったのではないか。事業分野を詳しく知っているかどうかは関係ない。経営の原則は、どの事業も同じ。売り上げを最大にして、出費を最小にして、従業員に一所懸命、働いてもらう。これには人心掌握が欠かせない。

結局、経営の理屈は簡単。設計や開発のほうが、はるかに大変だ。だが、設計や開発、モノを作るということに関しては専門家がいる。だから、彼らの人心を掌握して、いかにがんばってもらうかに尽きる。今まで赤字の会社を買収してきて、なぜ再建できたかといえば、それはひとえに人心掌握ができたからだ。

(撮影:今井康一)

筑紫 祐二 東洋経済 記者

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ちくし ゆうじ / Yuji Chikushi

住宅建設、セメント、ノンバンクなどを担当。「そのハラル大丈夫?」(週刊東洋経済eビジネス新書No.92)を執筆。

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