ベンツAクラス「A200d」乗ってわかった最新進化 力強さと上質さを両立するハッチバックの実力
ターボチャージャーの効きはマイルドだが、しかし効果的だ。振動も騒音もとても低く抑えられていて、気持よく上の回転までエンジンがまわる感覚はすばらしいと思えた。ディーゼルだと気づくのはサービスステーションで燃料を入れるときだけかも、と思わせるほどだ。
1.33リッターガソリンエンジン搭載のA180に対して、補機類が増えたせいで100キロすこし重量が多い。が、それがプラスに働いている印象だ。いわゆるバネ上が重くなったせいで、乗り味がしっとりしているのだ。
Cクラスを思わせる独特の慣性フィーリングのステアリングホイールとともに、A200dは従来のハッチバックの枠ではくくれない、独自の上質感を手に入れているといってもいいだろう。
試乗したモデルはスポーティなオプション「AMGライン」(20万4000円)をそなえていた。標準では16インチのホイールが18インチになるとともに、フロントスポイラーやサイドスカートなどの外装パーツが加わる。
さらに、本革巻きスポーツステアリングホイールが備わり、シート表皮やダッシュボードにレザーダイナミカとメルセデス・ベンツが呼ぶ人工スウェードが使われる。機能面では、アダプティブ機能が備わったマルチビームLEDヘッドライトが「AMGライン」に含まれる。
AMGラインでスポーティな仕様が人気?
AMGライン専用のシートは前後席ともにヘッドレスト一体型のスポーティなものだ。標準モデルのヘッドレスト別体型シートもけっして悪くないがカラーがブラック系のみなので、華やかさという点でも、レッドステッチを持ったAMGラインのシートはいいかもしれない。
それに日本市場ではスポーティな仕様の人気がとりわけ高い。メルセデス・ベンツのほとんどのモデルでAMGラインが設定されているし、BMW(Mスポーツ)やアウディ(S line)も同様だ。なのでリセールを考えても、スポーティ仕様を選ぶひとが多い。
試乗したA200dは18インチホイールに扁平率45パーセントとやや薄めのタイヤを装着していたが、乗り心地はけっして悪くなかった。意識していると多少路面のゴツゴツを拾う場面もあったが、スポーティなハンドリングのために乗員が不快を感じるような関係は生まれなさそうだ。
スマートタブレットを立てたようなデザインのダッシュボードはAクラス(とBクラス)独特のものだ。速度計も回転計もデジタル表示で、スクリーンをタッチすることでナビゲーションやインフォテイメントシステムの操作が出来る(音声でも)。
音声認識を含めた斬新なシステムはAクラスから始まった。かつて海外で開発者に会ったとき、「なぜトップオブザラインのSクラスからではないのですか」と訊ねたことがある。答えは「いいと思ったら、どのモデルからでも。メルセデス・ベンツのラインナップに上下はないのですよ」というものだった。
たしかに、ハッチバックだから経済効率重視のひとむけとか、そんなふうにとらえて、A200d(399万円)に乗らないでいるともったいないといえるほどだ。ハッチバックボディにディーゼルエンジンという組み合わせを持つドイツ製のライバルは、いま日本市場にはない。独自性が光るクルマなのだ。
(文:小川 フミオ)
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