新興国市場のIPO拡大に明るい展望 投資家の資金取り込みに注力
ロイターのデータによると、新興国企業が2013年に新株発行で調達した資金の総額は475億ドルだが、新株発行が活況を呈した2007年と2010年の1500億ドル程度に比べると3分の1の水準にとどまっている。
プライスウォーターハウスクーパースによると、中国証券監督管理委員会(CSRC)が凍結していたIPO市場を1年ぶりに解除したことを受け、今年の中国本土企業の新株発行額は2500億元(413億ドル8000万ドル)に達し、史上2番目の規模となる見通しだ。
既に50社以上が上海、深セン両証券取引所への上場計画を発表したほか、数百社が後に続く見通し。今年は最大で500社にIPOの許可が降りる可能性もある。
CSRCは今月、IPOの行き過ぎた価格設定を防ぐために新たなルールを策定した。既に中国の小規模企業3社が同業他社より低い価格での株式公開を決定している。
香港でも今年の企業の資金調達額は322億ドルに達する見通しだ。これは2010年以来の高水準で、13年の2倍に相当する。
ことし見込まれる大型上場では、中国の食肉大手である双匯国際が50億ドルを調達するほか、医薬・化粧品のASワトソンや中国電子商取引大手アリババ・グループの調達も見込まれる。
マリスカル氏は「アジアで多くの新株発行が行われる。市場では改革に伴い投資意欲が高まっている。中国以外にメキシコ、韓国も良好なIPOが進み、センチメントの改善に寄与するだろう」と話す。
IPOを前進させる動きは、以前は市場の流動性と透明性の低さゆえに専らプライベートエクイティ企業の投資先だったアフリカの新興市場によっても後押しされている。
アフリカ市場は徐々にIPO投資に門戸を開いており、チュニジアでは先週、同国証券取引所では過去最大規模の上場があったばかりだ。
上場したのはオムツ、タオル製造のソシエテ・ドゥ・アルティクル・ハイジェニック(SAH)で、内外の投資家から2億7050万ディナール(1億6347万ドル)を調達。プライベートエクイティ企業のエマージング・キャピタル・パートナーズが株式売却で利益を得た。
長年続いた同国の政情不安が改善の兆しを示す中で、国内向けでは予定額の22倍を超える応募があった。
アフリカ市場が本格的にIPO投資を開放した場合、高利回りだが手間のかかるプライベートエクイティ投資よりも上場市場でのパッシブ運用を選好する大型機関投資家にとっては魅力的かもしれない。
アルジェリアは証券取引所における外国人投資家の株式購入を認める計画で、当局は今後5年間に上場企業数が現在の4社から50社に増えると見込んでいる。
モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)によると、新興市場の株式時価総額はまだ3兆9000億ドルで、フロンティア市場の株式市場は成長過程にあるものの1430億ドルにとどまっている。
ルネサンス・キャピタルのチーフエコノミスト、チャールズ・ロバートソン氏は「IPOにとって必要なのは資金調達を望む企業と、市場の意欲だ。双方が存在するのはどこかといえば、一番面白い地域はアフリカだ」と話している。
(脇奈津子記者)
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