英会話ネット学習はこんなにも進化している 古参レアジョブの創業から12年、業界の課題

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オンライン英会話は2000年代後半に急成長したが、2010年代前半をピークに淘汰された経緯がある。その後台頭した新勢力の代表格が、DMM.comグループが運営する「DMM英会話」だ。「われわれの特徴は一言でいえば『楽しい』英会話の提供」。そう語るのはDMM英会話の上澤貴生代表。「楽しい」というコンセプトの実現のため、力を入れてきたのが講師の多国籍化である。

レアジョブがフィリピン人講師中心なのに対し、DMM英会話の講師は国籍が113カ国(5月末時点)と幅広い。セルビア、モンテネグロなどの東欧、最近では南アフリカなどアフリカ人も増えている。「話したことがないマイナーな国の人と話せることが楽しいという声は多い」(上澤氏)。

国籍が広がると講師の質の担保のハードルが上がるが、講師が一方的に話さないよう「レッスン時間の7割はユーザーさんの話を聞くようにするなど、日本人がとっつきやすいサービスになるよう厳しく教育している」(上澤氏)。教材面でも「楽しさ」にこだわる。「DAILY NEWS」という教材では、大雪が降った日にすぐ交通渋滞のトピックを取り上げるなど、今現在の話題をすぐレッスンで話せるよう工夫を施す。

ゴールはビジネスの成果

同じく昨今の成長組で「ビジネス特化型ナンバーワン」をうたうのが、ビズメイツだ。鈴木伸明社長は「うちは英語が話せることではなく、ビジネスで成果を上げることがゴール。他社とはコンセプトが異なる」と強調する。講師はフィリピン人中心。他社よりも高報酬でビジネス経験者を選抜する。その分、受講料も月1万2000円からと高額だ。

法人研修を多く手掛け、会社ごとのカスタマイズ教材を作成するのも特長。たとえばJR東日本では駅での外国人との英語でのやりとり、東急リゾートでは投資物件販売の英語での言い回しなどをきめ細か指導。単なる英会話でなく、「いかに外国人と信頼関係を築くかのポイントも教える」(鈴木氏)。

予約なしで受講できる点が人気のネイティブキャンプも、2015年のサービス開始後、急成長を続けている。講師陣の国籍は100カ国以上と多様。他社ではレッスン予約が必要なケースがほとんどだが、予約不要の「今すぐレッスン」を用意。また「レッスン回数無制限」のサービスも売りにしている。

そうした差別化が可能なのは、母体がIT企業で通話システムを内製しているため。主にスカイプを使用してきた他社は通話と予約などの機能を連携させにくかったが、自社システムであれば可能だった。

ただし前出の3社も目下、システム内製化に注力。順次切り替えを始めている。今後予約不要などのサービスで他社が肩を並べれば、いかにコンテンツで優位性を図るかが試される。オンライン英会話は熱戦を繰り広げながら進化を続けている。

『週刊東洋経済』6月8日号(6月3日発売)の特集は「最短やり直し英語」です。
許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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