JR九州vs外資ファンド「株価倍増」めぐる攻防戦 にっこり笑って「鉄道事業には注文付けない」

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ただ、JRや大手私鉄のIR担当者に聞くと、外国人投資家の投資スタイルはさまざまだ。「会社全体で利益が出ているうちは赤字路線について言及するつもりはない」という投資家もいれば、「航空業界のように需要と供給によって運賃が変わるダイナミックプライシングを導入すべきだ」と大胆な提案する投資家もいるという。一方で、日本の地方鉄道が置かれた状況をきちんと調べて、不採算路線に対する方針を聞いてくる投資家もいるようだ。

スターン氏はJR九州の過去の鉄道事業の実績を評価しているが、実際には同社の鉄道事業は今後厳しさを増す。九州の人口減少という外的要因もさることながら、経営面にも要因がある。上場前に鉄道の資産価値がほぼゼロになるまで減損処理を行い、上場時は減価償却費ゼロというスタートを切ったが、その反動で設備投資に合わせ減価償却費は年々増える一方だ。

税制特例措置も廃止され、費用負担はさらに増える。2021年度の営業利益見込みは210億円で、上場初年度の257億円に届かない。長崎新幹線もフル規格化で博多まで実現しないと高い収益力は発揮できない。

「物言う株主」はJR九州を強くするか

スターン氏はJR九州株式を「5~10年は保有したい」と話す。その間に株価を目標とする2倍の水準まで高めることができるか。不動産事業や資本政策の提案が不調に終わった場合、例えば不採算路線のバス転換など、鉄道事業にメスを入れて収益改善を図る提案が出てこないという保証はどこにもない。

では、物言う株主に対して鉄道会社はどのように対応すべきなのだろうか。サーベラスの増資を受け入れた西武HDは、サーベラスと毎月のようにミーティングを持つことで、サーベラスから経営計画の進捗状況をつねに求められるようになった。

その結果、よく言えば「超長期的な視点の会社」、悪く言えば「短・中期的な経営計画がない会社」だった西武は、長期的な目標を中期的、短期的な計画に落とし込み、目標達成の手段を綿密に考えるという「普通の会社」に生まれ変わった。

そう考えると、物言う株主の登場は悪いことばかりではない。彼らと上手に付き合うことで、JR九州の経営力はさらに強くなるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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