JR九州vs外資ファンド「株価倍増」めぐる攻防戦 にっこり笑って「鉄道事業には注文付けない」
次に、ファーツリーは、JR九州の社外取締役は不動産や投資の専門知識に欠けるとして、3人の専門家を社外取締役に選任することを提案している。この提案についてもJR九州は反対している。だが、一方で、JR九州は不動産やIRに精通する別の2名の社外取締役の選任を提案するとしている。
このほかにも指名委員会等設置会社への移行に関するファーツリーの提案に対して、JR九州は「2018年に監査等委員会設置会社に移行したばかりで、指名委員会等設置会社に移行するのは非効率。また、2019年3月に指名・報酬諮問委員会を設置した」という理由で反対している。
株式報酬の導入というファーツリーの提案についても、JR九州は「業績連動型報酬制度の導入を提案する」という理由で反対した。
鉄道事業をどう見ているか
こうしたJR九州の対応について、スターン氏は、「われわれの提案内容に似ており、JR九州はわれわれの目指す方向に向かっている」と、笑みを浮かべる。この点についてJR九州のIR担当者に聞いてみると、「ファーツリーの提案を受けて代案を用意したので訳ではない」とのことだった。
スターン氏は、「今後もJR九州と対話を続ける」とした上で、「株主総会に向けて適切な判断をしていきたい」という。
気になるのは、JR九州の鉄道事業をファーツリーがどのように考えているかだ。サーベラスと西武HDの間では収益性が低いと思われる路線の扱いが議論になったが、JR九州は西武よりも多くの不採算路線を抱えているはずだ。株主価値向上に向けて不採算路線の廃止が議題に上がってもおかしくない。
この点について、スターン氏は「鉄道路線網に手を付けなくても不動産事業の成長力や資本構成の改善で株主価値を拡大できる」と言い切る。
JR九州の鉄道事業については、「過去数年にわたって収益力を改善してきたJR九州経営陣の手腕を支持しており、経営陣に注文をつけることはしない。将来、新幹線(九州新幹線西九州ルート)が開業すればさらに売り上げが伸びるし、(不採算路線については)地域のサービスに貢献しなくてはいけないことは理解している」と賞賛する。
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