JR九州vs外資ファンド「株価倍増」めぐる攻防戦

にっこり笑って「鉄道事業には注文付けない」

サーベラスの提案には多摩川線、山口線、国分寺線、多摩湖線、西武秩父線の廃止や埼玉西武ライオンズの売却が含まれていた。もっとも、サーベラス側によれば、これらは要請したわけではなく中長期的な検討課題として列挙しただけだという。

西武ホールディングスの後藤高志社長(撮影:梅谷秀司)

提案を受け入れない西武HDに業を煮やしたサーベラスは2013年3月、32.4%の株式保有比率を44.6%に高めるべく、1株1400円でTOB(株式公開買い付け)の実施に踏み切ったが、3%の応募にとどまった。同年6月の株主総会では取締役の追加選任を提案したが、サーベラスの提案はすべて否決された。

2014年4月に西武HDが上場を果たすと、サーベラスは2017年8月までに同社株式をすべて売却した。西武HDの後藤社長は、「サーベラス社とは一時緊張感が高まった場面もあったが、当社の上場も実現し、これまでのサポートに感謝している」とコメントした。

狙いは株価の上昇

TOBや株主提案が不調に終わったことで、サーベラスは西武との戦いに敗れたようにも見えるが、実際のところはどうだったのだろうか。

サーベラスが仮に2017年当時の株価水準に近い1株2000円で売却していれば、売却総額は2000億円を超える。つまり、1000億円の投資に対して1000億円を超える売却益を手にしたわけだ。低金利下の日本においては大成功の投資だが、高い運用成績が求められるヘッジファンドとしては「ぎりぎり及第点」だろうか。

ほかに米国の投資ファンドによる鉄道関連の対立事例としては、日立製作所とアメリカのエリオット・マネジメントのバトルも挙げられる。

2015年11月に日立はイタリアの大手鉄道信号メーカー・アンサルドSTS株式40%を1株9.5ユーロで取得し、さらにTOB(株式公開付け)により過半数の株式を取得して同社を傘下におさめようとしたが、アンサルドSTS株式の31%を保有するエリオットは「TOB価格の1株9.68ユーロは安すぎる」として、TOBに反対した。

その後、アンサルドSTSの株価がエリオットの希望する株価水準まで上昇し、日立は2018年11月に1株12.7ユーロでエリオットが保有する同社株式のすべてを買い取った。日立がエリオットに支払った金額はおよそ1000億円。おそらくエリオットは数百億円の利益を手にしたはずだ。

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