「車で乗りに来る」観光列車が赤字鉄道を救った 廃線論を一掃、人気キャラで「親子」客を狙う

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列車が発車するとすぐに「ジャンケントレインダンス」の車内バージョンがはじまる。走る列車は揺れるため、座って踊ることができるバージョンだ。このとき、高校生たちは乗客の間に散って座り込み、ダンスの練習をする親子とコミュケーションをとる。それまでおもちゃに夢中だった子どもが、1人また1人と「ジャンケントレインダンス」に加わっていく様子がなかなか微笑ましい。

長良川鉄道のアテンダントによるパネルシアターに釘付けの子どもたち(筆者撮影)

続いて、長良川鉄道のアテンダントがチャギントンを題材にしたパネルシアターを演じる。棒の先にチャギントンのキャラクターを描いたものをパネルにかざして上演する、これまた手作り感いっぱいの内容で、子どもたちはこれに夢中になっている間に終着駅に到着するという具合だ。

このように「ながてつチャギントン」は単なるラッピング列車ではなく、高校生とアテンダントという、フレンドリーなおもてなしを提供する子ども向けの観光列車だった。対象年齢は小学生以下だが、幼稚園児あたりがもっとも喜んでいるようだ。その対象者に乗車してもらうため、そして高校生の協力を得るためにも、4月の運行の次は7月下旬~8月となる。

なぜ「チャギントン」?

高級路線で熟年層が主な対象となる観光列車「ながら」とは明らかに一線を画した列車だが、一連の観光列車を企画・推進してきた坂本専務によると、その理由は大きく2つあるという。

1つ目は「ながら」の利用客数が落ち着いてきたことだ。

イベントにしろ観光列車にしろ初年度は大きな反響を呼ぶものの、その後は次第に落ち着いていくのはいずこも同じだ。その間に、乗客からの反響を確認してサービスを改善したり、次なる手を打つことで投資効果を継続させる。

その手段として、「ながら」森号・鮎号の投入から2年経ったところで「ながら」川風号を投入した。これは、食事付きの「ながら」鮎号が乗車券込みだと1万円を超える料金で、気軽に利用できないとの声に対応したという。「ながら」川風号は食事付きで6000円だ。

そのうえで、さらに新たな話題を作るために登場させたのが「ながてつチャギントン」とのことだ。

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