「車で乗りに来る」観光列車が赤字鉄道を救った 廃線論を一掃、人気キャラで「親子」客を狙う

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ちなみに「ながら」鮎号・森号を導入する際の車両改造費用などの投資額は約6000万円で、うち総務省の地域経済循環創造事業交付金4200万円を除く借入額1800万円は初年度中に回収できているという。

続く「ながら」川風号の導入に当たってはクラウドファンディングを利用し、100万円の目標に対して224.1万円が集まった。総投資額1500万円のうち1000万円は岐阜県から支援を得ているため、長良川鉄道としての支出は300万円を下回り、こちらも初年度で回収できたという。

第3弾となる「ながてつチャギントン」も既存車両を改装した。費用は約800万円で、車内を畳敷きにしたり車体にラッピングするなどの費用だが、その多くはキャラクター使用料だという

これら一連の投資に対して、主要株主である沿線自治体はまったく資金援助をしていない。筆頭株主である岐阜県からは支援を受けているものの、リスクをとっての投資だと坂本専務は笑う。岐阜県庁出身者だけに、各自治体の考え方も理解したうえでの判断だ。

イベントと観光列車で存続へ

長良川鉄道は、1986年の発足から5年程度の間は、赤字基調ではあったものの乗客数は比較的安定していた。しかし1996年の運賃値上げ後は、並行する名鉄美濃町線廃止(新関―美濃間:1999年)で一時的に持ち直したものの、定期券利用者を中心に大幅な減少がつづくこととなった。

さらに2008年のリーマンショックによる景気減退に加え、同年に運賃値上げをしたことから利用者は激減した。この結果を受けて、沿線自治体の一部からは長良川鉄道を廃止する方向で話し合う時期に来ているとの声が上がった。

そのタイミングで2011年に坂本専務が就任。各種のイベントを打つなどして立て直しを図った結果、利用者数の減少は底を打ってほぼ横ばいとなり、赤字額は過去10年で最低レベルにまで持ち直した。とくに2016年度の「ながら」運行開始による増収効果は劇的で、沿線自治体は長良川鉄道存続の方向に意見が変わったという。

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