読売テレビの「性別質問炎上」に何を学ぶべきか

報道番組として少数当事者の声を忘れるな

VTRに登場した性別不明に見える人物(番組内では「男」であるとカメラの前で表明した)が実際にLGBTなど性的マイノリティーに属する人でなかったとしても、そういう人が近くにいる場合にその「性別」を他の人間が無神経に確認してもいいのだとテレビが助長し加担することにほかならない。いわば、子どもへの「いじめ」行為を、電波を使って助長し加担する場合と同じように、人権侵害になりかねない放送だとも言える。

だからこそ、コメンテーターの若一氏がスタジオで声を荒げて「人権感覚、人権認識にもとります」と抗議して問題性を告発したことは当然だった。

若一氏が問題を投げかけたことがツイッターで拡散して多くの人の知るところとなって社会問題化し、「まずい放送」だったことを認識した読売テレビは週明けの13日の同番組の冒頭で報道局長らが頭を下げた。「プライバシー、人権への配慮を著しく欠いた、不適切な取材・放送」だったとして謝罪し、『迷ってナンボ!』のコーナーを休止する判断を示した。

若一氏という外部のコメンテーターのおかげで放送中に「不適切な取材・放送」であることを自ら示すことができたのは、結果的に不祥事になったとはいえ、傷を最小限に食い止めることができたものと言えるだろう。番組制作の最高責任者が登場して頭を下げ、この種の不祥事としてはかなり迅速に対応したほうだと言える。

「報道番組」としての意識の欠如

確認しておくと、同番組はニュースも放送すれば、ファッションやグルメなども扱う、いわば「ごった煮」の「夕方ワイドニュース情報番組」である。

筆者の見るところ、読売テレビでこの問題が起きてしまった背景には「報道番組」としての意識の欠如があると考える。市井に生きる人たちの性的プライバシーを暴露するような取材や放送は、仮に報道番組でなくバラエティー番組であったとしても当然ながら許されることではない。

試しに今回の番組を若い20歳前後の若者たちに視聴してもらったところ、かなり辛辣な批判が相次いだ。バラエティー番組などお笑い番組を見慣れた世代の若者は、「笑えない」という反応を示した。

つまり相手の「生き方」へのリスペクトがある「笑いがある番組」ではなく、ただ、何かを暴露しようという、品のない「笑えない番組」だという認識を示したのだ。

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