景気後退期こそ、成長やシェア拡大のチャンス 世界大手コンサル・ベインのトップに聞く

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――世界的に昨年後半以降、景気減速感が高まっていますが、企業はどう対応すべきですか。

どの国の企業もますます激しい競争環境に置かれている。多くの企業が成長している景気拡大期においては、シェアなど競争上の相対的ポジションを変えることは難しい。

Manny Maceda/アメリカ生まれ、フィリピン育ち。イリノイ工科大学化学工学部卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院で経営学修士号を取得。デュポンで勤務後、1988年ベイン入社。2018年3月から現職。ベインのグローバル全オフィスにおける戦略、チーム、オペレーションすべてに責任を持つ(撮影:尾形文繁)

しかし、景気後退期は、一部の企業は規模を縮小させ、短期間のうちに順位の変動が起こりやすい。わずか3年間のうちに3位の企業が1位に浮上することもありうるし、逆に1位から5位へと一気に転落する可能性もある。つまり、不況期にこそ優勝劣敗が際立つ。だからこそ、企業は景気の減速や後退に備えてプランを考えておくことが重要だ。

不況期において企業はふつう、利益を維持しようとしてコストを削減し、投資を中止する。つまりディフェンシブで受け身の姿勢になる。だが一方で、そうした不況期をチャンスととらえ、攻めの姿勢をとることで成長している企業もある。当社の調査によると、そうした企業の戦略には次のような違いがある。

第1に、好況期のうちに不況期における明確な戦略プランを用意していること。第2に、不況を迎える前に強固なバランスシートと軍資金を備えていることだ。不況期に入れば資産の価格は下落し、成長のための戦略的M&Aを実施するには好機となる。事前に準備していれば、他社に先んじて好機を生かせる。また、不況期に販売価格を下げてシェア拡大を図るうえにおいても、短期的な利益圧迫に耐えうる事前の体力が必要だ。こうした戦略は不況期が始まってからでは準備できない。

金融危機後の柔軟な資本戦略が差をつけた

前回の景気後退期であるリーマンショック後に勝者になった企業は、「フレキシブルな企業のエコシステム」を構築した新世代の企業と重なる。アメリカの「GAFA」や中国の「BAT」が代表例だ。こうした企業は柔軟な資本戦略によって、伝統的な企業が投資しない不況期に投資を行って成長し、他と差をつけた。

世界のビール業界でも前回の不況期に大きな再編(2008年にベルギーのインベブがアメリカのアンハイザー・ブッシュを買収)があった。それが、現在のアンハイザー・ブッシュ・インベブの圧倒的なシェアにつながっている。

――デジタル革命という今のメガトレンドの中で、日本企業に勝機はあるでしょうか。

人工知能(AI)の進歩など、今の技術的なメガトレンドはまだまだ非常に初期段階にあると私は考えている。製造業を自動化するロボット技術で日本が世界の勝者となったように、ビッグデータやAIを活用したサービス分野の自動化においても日本が大きな役割を果たすチャンスは十分ある。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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