10代に「SCHOOL OF LOCK!」が響きまくる理由 ラジオ離れの中で気を吐く人気番組の裏側
――10代に向けたプロモーションなどはどのように行われたのでしょうか。
それが、まだSNSもスマホもなかった時代ですし、特別なことは何もできていないんですよ。
ただ、それまでのキャリアで関係値があった若いアーティストたちに片っ端から協力してもらっていて、彼らがそのタイミング以降、次々に大勢のファンを抱える超人気者になって行ったことは番組の認知を高めていくのに大きく影響したと思います。
RIP SLYME、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどなど、今では誰もが知るビッグアーティストになったメンバーが番組の中で授業(レギュラーコーナー)を担当してくれましたから。
掲示板から生まれる、番組とネットとリアルの接点
――番組だけでなく、インターネット上の掲示板が、リスナーたちのコミュニティーとして活用されています。常時、多くの投稿で盛り上がっていますが、これはどのような戦略に基づいているのでしょうか。
「放送がない時間帯でも、みんなが自由に話せる教室をインターネット上に作ろう」と番組開始当初より設置したものです。そこで24時間いろんな話題が飛び交う中で、番組の開始時刻になるとガラッと教室の扉が開いて、「今の話、面白いじゃん。もっと聞かせてよ」と先生が入ってくる。そんな仕組みを作りかったんです。
ときには掲示板上でリスナー同士で感情をぶつけあったり、あるいはヘコんでいるヤツが励まされていたり、いろんなコミュニケーションが生まれます。放送中、その当事者たちに電話出演してもらうこともあるんですが、それがリスナーのみんなからすると、ネット上とリアルの生々しい接点にもなりえます。
ネットの掲示板では雄弁に語っていた子が、電話では妙にもじもじしていたりするのも含めて、言葉を書いた人はネットの向こうでは現実に生きていて、ちゃんとドキドキしたり、顔が赤くなったり、鼓動が鳴る、というようなリアルな感覚や感情が生まれるわけです。
――なかには切実な悩みが書き込まれることもあるとか。
そうですね。もし深刻な書き込みがあったら、番組収録とは無関係に、スタッフが本人に電話をして、相談に乗ることもあります。なぜなら、この掲示板に送られたのが、本人にとっては精一杯のSOSかもしれないですからね。
例えば、今年の2月には、「この世界から虐待をなくしたい」というテーマで放送を行いました。
リスナーの中には深刻な虐待被害に遭っている子もいて、誰にも言えずに苦しみを抱え続けているケースもあります。そこで、虐待をなくすためにどうすべきかを皆で考えようという趣旨のもと生放送をしました。もし本人が声をあげることができなくても、放送後は番組公式のYouTubeチャンネルにアップした動画で児童相談所の連絡先を紹介するなど、前へ進むきっかけにしてほしい、と。