地元は九州の衰退する街で、両親と弟が暮らしている。彼女は27歳のとき、准看護学校を卒業し、都内の病院に就職するために上京した。
「私、小学校でも中学校でも、家庭でもずっとイジメられていて。両親からは毎日殴られたり、蹴られたり。虐待です。2歳年下の弟も中学生になってから、私に暴力を振るうようになって。もう起きている時間は、ひたすら暴力に怯えるみたいな生活でした」
物心ついた頃から両親からの虐待がはじまり、弟は中学生になってから家庭内暴力を起こすようになった。家庭内暴力で、最も被害を受けたのは姉の甲斐さんだった。
家庭と学校でイジメられていた
「両親が虐待する理由は、気に入らないとか、勉強ができないから。いちばんおそろしかったのは弟で、木刀で殺意みたいなのを持って殴りかかってきたり、本当に毎日命の危険を感じるような数年間でした。
私は小学校1年生の頃からクラスだけでなく、学校の全員からイジメられていて“ばい菌”とか“汚い奴”とか呼ばれていました。小学校は入学から卒業まで人間扱いされませんでした」
2歳下の弟は「ばい菌の弟」ということで彼女と同じく、小学校入学から徹底的にイジメられたという。高学年になる頃には学校や家族を恨むようになり、中学生になって非行に走った。とくにイジメの原因となった姉への恨みは尋常ではなく、彼女は何度も病院送りとなっている。
「家族や弟の殴る蹴るだけじゃなくて、存在が認められない学校のイジメはツラくて、親や先生にも何度も相談しました。登校拒否したかったけど、母親が世間体の悪いことをするなって暴力を振るう。学校に行けば先生は“イジメられるほうが悪い”しか言わなくて、本当に逃げ場は一切ありませんでした」
昼時のファミリーレストラン。彼女の居住地は東京都下で、ランチの繁忙時間でもそんなに混んでいない。甲斐さんは痛々しいこれまでの経験を独白みたいな口調で語る。筆者は黙ってうなずいたり、相づちを打ちながら聞き続けた。
「中学生になってからは両親、特に母親が厳しくなった。友達はゼロだったけど、誰かと交流するとかテレビとか禁止されて、一日中家で勉強しろみたいな感じになった。それで、テストができないと暴力です。怖いし、痛いし、仕方なく親の言うことを聞いていました。でも結局、成績はあまり上がらなかった」
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