職と給料を失う「定年Hanako」に居場所はあるか Hanako世代を襲う「サラリーマンロス」の正体
それは、私にとてもよい変化をもたらしてくれました。金融業界にいた私にとって、手の洗い方、パンの並べ方、パン包丁の扱い方など、作業の一つひとつが新鮮でした。好きなことですから、衰え切った記憶細胞もフル回転してくれます。そして、職人さんたちが試行錯誤しながら作る美味しいパンの香り、それを手にするお客様の笑顔、先輩スタッフの温かさによって不安が薄らぎ、いつの間にか前向きな気持ちになっていきました。
「好き」なことに囲まれる幸せとともに、名刺のない等身大の自分がいる場所が家の外にあることで心の平穏を取り戻したのだと思います。さらに、スタッフ同士は「好きなこと」が一緒ですから、飛び交う情報は宝箱のようでした。会社のようなヒエラルキーのない世界で自分の長所や短所を指摘されたことも財産となりました。
女性も「サラリーマンロス」に襲われる
その後は私がサラリーマン時代にやってきた仕事について、お声がけいただいたおかげで、「確定拠出年金」や「サラリーマンの老後準備」に関わる仕事をさせていただけるようになりました。しかし、今でも「食」、特に「パン」と「野菜」についての学びは続けていて、そこで知り合った方々との交流は私の心の支えとなっています。
もちろん、これは私個人の例ですから、誰にでも共通することではないことは承知していますが、「定年」になって「サラリーマンロス」とでもいうような虚無感に襲われるのは男性だけではありません。すでに趣味を持ち、そういう仲間がいる人であれば問題ないのでしょうが、そうでなければ、自分が夢中になれることをやって心の支柱を手に入れることは、とても重要です。定年に向けた「定活」は、男性だけの課題ではないことは認識しておくべきでしょう。
次回は、女性なのに男性脳を持つ「サラリーマン女性」の悩ましい問題についてお話しします。
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