《NEWS@もっと!関西》社員全員が「ゴルゴ13」になることが理想--浪花節ITベンチャー・柏木泰幸フェンリル社長(下)
一方で、新しいビジネスとしてもうひとつ、米アップル社の「iPhone」と「iPod touch」向けアプリケーションの開発に取り組んでいます。つい先日(1月24日)、ウェザーニューズ社と共同開発した「ウェザーニュース タッチ」が、App Storeで公開されました。気象情報を検索・閲覧するためのアプリで、お陰さまでユーザーの皆さんからの反響も大きいですよ。今後はこのように他社と共同開発するだけでなく、自社企画・開発案件も手がけたいと考えています。
フェンリルの主力ソフト「Sleipnir(スレイプニル)」は、カスタマイズ性能の高さがパソコン上級者に支持されている。一方で、スレイプニルをよりシンプルにした初心者向けWEBブラウザ「Grani(グラニ)」も展開している。
--今後の開発の方向性を教えてください。
ユーザーに魅力をもってもらえるようなプロダクトをつくるということですね。「ソフトウェア・ミーツ・デザイン」を経営方針のひとつとして掲げていますので、視覚的な要素と目的を果たすためのツールを組み合わせて、つまり「きれいで使いやすいもの」にこだわっていきたい。
ブランドの住み分けも明確にしていきます。主力ソフトの「Sleipnir(スレイプニル)」は包丁でたとえるならば、プロの職人だけが使いこなせるブラウザ。一方の「Grani(グラニ)」は初心者や主婦でも使いこなせる包丁、として伸ばしていきます。iPhoneの事業も注力しています。それぞれ、実用的で愛されるもの、長く使えるもの、目的を満たすものをつくっていきます。
ブラウザの本質にこだわったものをつくっていきたいですね。うちが目指すのは、最強の道具--。プロ野球選手でたとえるならば、「新庄剛志」的なソフトよりも、「イチロー」的なソフトをつくっていきたいということです。あ、ちなみに僕は阪神タイガースのファンで、(タイガースの主力選手だった)新庄も好きなんですよ(笑)。
柏木社長の言葉に、思わず驚きの声を出してしまった。あえて勤務時間を短くする理由。それは、限られた時間内でパフォーマンスを発揮する努力を続けることで「社員が一流に成長する」と言うのだ。自己啓発の啓蒙はあくまで二次的なものに過ぎない、としている。確かに一般的な会社員の場合、ダラダラとした会議など生産性のない時間があることは事実。ただ、納期遅れなどが続くことになれば、やがて取引先の信頼を失うことになりかねない。そのリスクをも厭わない頑固な姿勢の裏にあるのは、柏木社長の「自信」であろう。それは自分の技術力に対してなのか、ユーザーのニーズを汲み取れる感受性に対してなのか。どちらにせよ、柏木社長が社員一人ひとりの実力をアップすることが、ユーザーへの貢献につながると信じていることは間違いない。「会社は誰のものか」という問いかけに、経営者でも従業員でもなく「ユーザー」とした柏木社長の見解は新鮮だった。
かしわぎ・やすゆき
フェンリル代表取締役社長。1981年8月29日生まれ、27歳。大学在籍中の2002年に初代「Sleipnir」を開発。エンジニアリング系の会社勤務を経て05年にフェンリル設立。和歌山県出身で、同郷の松下幸之助に関する本を読み漁っている。
(梅咲 恵司 =東洋経済オンライン)
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