スーツ価格じわり上昇、セール合戦と決別か 高単価品の販売増も平均単価上昇の一因

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だが近年では、行き過ぎた価格競争を見直す動きが出てきた。客からの「本当の値段がわからない」という価格不信の払拭や粗利確保を目的に、業界4番手のはるやま商事は12年4月から2着目セールを原則廃止。同社のスーツ単価は11年度の2万0800円から12年度には2万2280円へ7%強上昇した。

「GMSも衣料品事業の規模縮小やウールなど素材価格の高騰で、以前のような体力勝負は仕掛けてこなくなった。業界全体でセールの連鎖が減っている」(青山商事の千葉直郎執行役員)

さらに、12年末からの円安で仕入れ原価が上昇。セール廃止の背景には「値引き競争で利益を失いたくない」という思惑も見え隠れする。

高級スーツも販売好調

直近では高額消費の追い風も吹く。「財布のひもが緩くなっている今が好機」(AOKIの清水彰社長)。同社は現在、温度調節機能を付加した高機能スーツなど、高単価品の売り場を広く取っている。

百貨店で展開する高級スーツの動きも好調だ。三陽商会の紳士スーツ単価は約10万円と13年1~11月で前年同期比4%上昇。中でもイタリア製素材を使った「ポール・スチュアート」ブランドの15万円のスーツが平均単価アップを牽引しているという。「冬のボーナス増や消費増税前の駆け込みが追い風になっている」(三陽商会)。

ただ、4月の消費増税が消費者心理に水を差せば、価格の引き下げ競争が再燃する懸念もくすぶる。増税後も上昇基調を維持できるか、紳士服各社は気をもんでいる。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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