「子どもへの性犯罪」防止に知っておくべき事実 小児性犯罪者の治療に関わる専門家に聞く

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子どもへの性的嗜好を持つ人は、子どもにしか性的関心を持たないタイプと、子どもと成人の両方に性的関心を持つタイプに分かれるという。

諸説あるものの、子どもにしか性的関心を持たないタイプは先天的な要素が強く、子どもと成人の両方に性的関心を持つタイプは後天的なものだと言われている。しかしそれを裏付ける科学的なエビデンスがあるわけではない。

ただ成人とともに子どもにも性的関心を持つ人が後天的、つまり学習された行動だとされるのならば、そうした性的嗜好はどのように形成されるのか。

「最も多いのは同世代のコミュニケーションの挫折経験が引き金になるパターンです」と語る斉藤章佳さん(写真:リディラバジャーナル)

「私が治療にあたった100人程度の臨床経験ではという前提で言えば、最も多いのは同世代のコミュニケーションの挫折経験が引き金になるパターンです。過去にいじめを受けたり、性被害を受けた人も多い。例えば、最初のマスターベーションは父親や母親に無理やりされたといったケースもありました」

斉藤さんが治療した約100人はあくまで小児性犯罪者に限られるが、こうした経験は本人に自覚がなくとも、その後に性的嗜好が形成されるうえで少なくない影響を及ぼす可能性があると、斉藤さんは指摘する。

また児童ポルノの影響はどうなのか。

小児性犯罪者は児童ポルノを愛好していることが多いとされる一方、性的嗜好が形成されるうえで、どの程度の影響を及ぼすものなのかを示す実証的な研究はほとんどない。

しかし、小児性犯罪が常習化していくにしたがって、児童ポルノがその都度トリガーになるケースは多くあると斉藤さんは話す。

「児童ポルノは小児性犯罪の抑止力になるのではないかと言われることがありますが、抑止にはなりません。抑止にならないのは、治療中の多くの当事者がそのように話すことからも明らかです。むしろ助長させてしまっている側面のほうが強いのではないかと感じます。小児性犯罪者の認知の歪みを強化していることも事実です」

やめたくてもやめられない人たちもいる

斉藤さんによれば、小児性犯罪を繰り返す人は口をそろえて「これはいずれ経験することであくまで性教育だ」「自分としては子どもへの純愛だと思っている」と話すという。

ときには「多くの人が成人の女性を愛するように、私は子どもを愛してしまうのだから仕方がない」と、自らの問題行動を正当化するケースもある。

「だからこそ、小児性犯罪者を“小児性愛者”と呼ぶことに私は反対しています。彼らのなかには純粋な愛だと信じている人もいますが、それは決して愛と呼べるものではない。あくまで性暴力であり犯罪なんです」

そうした歪んだ認知を持つ一方で、小児性犯罪者自身も苦しんでいる側面がある。彼らのなかには、やめたくてもやめられないという葛藤を抱えて生きている人もいる。

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