東証の「市場区分」見直し、どう進めるべきか 蚊帳の外に置かれた投資家たちの不平と不満

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そもそも東証は懇談会メンバーに対し守秘義務を課しておらず、大崎氏は守秘義務に違反したわけでもないのだが、このことが原因で、大崎氏は公認会計士・監査審査会の委員への就任が見送られたとする報道が出たのが3月25日だ。これは、「東証外し」を目的とした金融庁によるリークと見るのは荒唐無稽だろうか。

金融庁は5月17日、市場区分の見直しについて話し合う金融審議会「市場構造専門グループ」の第1回会合を開く。今後は誰がどういう発言をしたのかがわかる議事録の公開も期待できる。

市場区分見直しの目的は、上場する企業が企業価値を向上することを通じ、公共インフラである東京証券取引所の価値をも向上させることにある。また、上場はゴールではなく、上場後も持続的に企業価値を向上させることが求められる。

上場企業の企業価値とは何なのか

議論を始めるには、「上場会社の企業価値とはそもそも何なのか」という議論が必要だった。いくつもある企業価値を計る尺度の中で、突然時価総額だけにスポットライトが当たり、東証1部上場を維持できるボーダーラインとして250億円や1000億円といった金額が一人歩きした。その結果、その金額周辺の時価総額の上場会社を不毛に動揺させた。

また、東証は20年以上にわたって上場基準を緩め、上場会社数を増やす方針を継続してきた。その方針に従って投資活動を続けてきた世界中の投資家とも折り合いをつけなければ、市場としての信頼を失う。

投資家も上場会社もいったん「250億円」といった数字を忘れ、上場会社の企業価値とは何なのかという、最も本質的な議論から始めるべきではないだろうか。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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