日本のテレビ局に圧倒的に足りない経営改革 ドワンゴ夏野剛社長「すごくもったいない」

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もう1つの大きな問題は、業界の構造です。芸能事務所が異常に力を持っていて、オーディションがありません。アメリカでは映画、ドラマの出演者や新しいキャスターなどは、新しい才能を発見する仕組みであるオーディションで決めます。ところが日本では、事務所の政治力で決まることが往々にしてある。これがもたらすのは、制作した番組をどのルートで流通させるかにまで事務所が影響力を持ち、ネット配信ができないなどといった、いびつな構造です。

このように人材の流動性が低いことや業界の慣習で、井の中でいろいろなことが決まってしまうために閉鎖性がきわめて高くなり今に至る、という話だと思います。

――外から経営者に来てもらうというのは?

NHKの経営委員は全員外部の人です。民放も電波という公共の資産を使っているのですから、取締役の半数以上を社外取締役にすることを義務付けるべきだと思っています。そうすれば、テレビのなかだけで育った経営者といえども外部の環境変化に敏感にならざるをえなくなり、経営のディシジョンメイクは大きく変わり、問題は一気に解決するでしょう。

そういう意味では、僕はAbemaTVに注目していて、その成否は日本のテレビ業界の今後を大きく左右すると思います。もし失敗という格付けになると、日本のテレビ業界の改革は10年遅れてしまうでしょう。

なぜ注目しているかというと、テレビ風の番組づくりで、テレビと同じ広告収入モデルで、テレビ局とガチで組んで、キャスティング、スタッフィングはテレビと同じレベルでやっているからです。テレビ朝日に行くと「一枚岩」というポスターがあちこちに貼ってあって、本気度がわかります。3年間赤字云々と言われますが、ではユーチューブは何年赤字を垂れ流しているんだという話です。大きな目で見ると、20以上のチャンネルとアーカイブがあるのだから、テレビ朝日と本当に一枚岩になれば、やれることはもっとたくさんあるはずです。

もしテレビ局の経営者になったとしたら

──政府の規制改革推進会議での議論について、どう感じていますか?

電波という国民の有限な資産を割り当てられているプラットフォーマーとしての放送局の立場と、コンテンツを制作する側としての放送局の立場がごっちゃになった法規制になっているのが問題です。例えばエリアを超える配信をしてはいけないというのは放送の話であって、コンテンツ自体は出しても問題ないのに、それがごちゃごちゃになっています。

総務省の人材についても、新卒で昔の郵政省に入り官僚の世界だけで来た人に、今の環境変化はなかなか理解できないでしょう。テレビ業界の改革を政府が叫ぶのであれば、最初にやるべきは行政の人材の流動性を高めることです。新卒一括採用、年功序列、終身雇用の担当官や事務次官が行政を担っているうちは、行政指導すら的を射ないのではないでしょうか。

――答申では不足する電波帯域確保のため、通信と放送の融合が重要とされていますが……。

テレビの放送波は4K・8Kと高精細になればなるほど、ますます重要になります。5Gになっても、4K動画を配信するとリソースをものすごく食ってしまって、その基地局の配下にいる他の人たちが迷惑を被ります。大量の高精細な画像データを流す波としては、5Gといえども携帯の波というのは高価で貴重なので、放送波の役割は残り続けると思っています。

次ページ4K・8Kになれば、むしろ放送波は重要になる
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