日本のテレビ局に圧倒的に足りない経営改革 ドワンゴ夏野剛社長「すごくもったいない」
アメリカのテレビ局は、ネット企業に買収されたり、出資を受けたりすることはいくらでもあるので、経営層の多様化はとっくに進んでいます。アメリカの大企業では、例えばCIO(最高情報責任者)やCSO(最高戦略責任者)のポジションは、みなネット業界から引き抜いてきた人になっています。いわゆる古い業界からシリコンバレーに行く人もいれば、その逆もあるという人材の流動性のために、ものすごい大革命、大変革が、シリコンバレーにとどまらず全産業にわたって起きています。
しかし日本は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用という3つの大きなマイナス要素を抱えたまま来てしまったので、どうしても内輪の論理になり、井の中の蛙としての経営しかできていないというのが、21世紀の20年間です。
テレビ局の経営層は、過去20年の世の中の変化をあまりに無視しすぎです。何が変化したかは簡単で、個人の情報収集能力がインターネット検索で飛躍的に拡大したことと、個人の発信力が飛躍的に高まったことです。どちらも組織に匹敵するほどで、これによっていろいろな才能が可視化されました。
例えばニコニコ(niconico)は、音楽の分野で間違いなく才能発見装置として動いています。米津玄師が出てきたし、Perfumeも最初はニコニコですから。でも今、「ニコニコ出身です」と大声で言ってくれるのはゴールデンボンバーくらい。偉くなるとだんだん言わなくなるみたいです(笑)。
ニコニコで才能を発掘されて成功するとテレビに行く。それでいいんです。われわれはそういう役割ですから。つまりテレビにとってネットは味方なんです。ネットとの共存どころか、ネットを使いまくって人材を発掘すれば、テレビのクオリティはさらに上がります。
番組の情報収集の仕方は明らかに変わっています。キャスティング、スタッフィング、もしかしたらファンディングの仕方も変えられるかもしれない。こんなチャンスがこの20年間ずっと起きているのに、テレビはそれをかたくなにやらずにここまで来てしまった。これから思い切りそれに合わせたらどうなるでしょう。少なくとも何もやらないよりはるかにマシですよね。
経営が、外部環境の激変に対応できるようになるには
――テレビ局はなぜ変化に対応できないのでしょうか?
経営者に、将来に備える気構えがないのでしょう。自分の任期中には備えるけれど、将来には備えない。知恵を出している感じがしません。外から見れば当たり前のことができないのです。「いやー、難しくてねー」とか言うのですが、よくよく聞くと、あまり難しくないのに誰もやっていないだけ。波風立てることのメリットが何もないと思っているのでしょう。今までの延長線上だけでなんかコチョコチョやっているようにしか見えません。本当にもったいないです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら