グーグルの廉価版スマホ・新「Pixel」は売れるか スペック抑え半額実現、気になるカメラ性能

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ピクセルの特徴は、光学性能で限界がある部分をAI(人工知能)が補う「コンピュテーショナルフォトグラフィー」を実現したカメラにある。背景をぼかす「ポートレートモード」や暗い場所でもくっきり撮影できる「夜景モード」、シャッターを押した前後の瞬間を連写して決定的瞬間を逃さない「トップショット」などの機能を持ち、スマホを評価する第三者機関からの賞も受けている。3aでもこれらの機能にはすべて対応する。カメラやセンサーのモジュールは3aでも変わらない。

Pixel 3aの夜景モードで撮影した写真(右)と、iPhone Xで撮影した写真(左)を比較すると、暗い場所での撮影品質が大きく違うことがわかる(記者撮影)

とはいえ先述のとおり、スペックが落ちた部分があるのは事実だ。ピクセル3には、グーグルが自社開発した画像処理用半導体チップ「ピクセル・ビジュアル・コア」が搭載されていたが、3aにはない。また、アメリカ・クアルコムのスマホ向けCPU(中央演算処理装置)も、ピクセル3では「スナップドラゴン850」を搭載していたが、3aでは下位製品の「スナップドラゴン670」となっている。

この点に関してラマチャンドラン氏は、「3aも3a XLも、ソフトウェアの最適化でピクセル3並みの性能を維持した。プロセッサーの性能は確かに異なるが、写真の仕上がりにほとんど差は感じないはず」と説明する。また、ピクセル3には前面に2つのカメラを搭載して広角撮影が可能だったが、3aではカメラは1つのみになっている。これにより、ピクセル3 XLにあった「ノッチ」と呼ばれる画面上部のくぼみが、3a XLではなくなった。

ソフトウェアの顧客体験は変わらない?

そのほかハードウェア面では、ピクセル3では筐体の素材がガラスとメタルフレームだったのに対し、3aではポリカーボン(プラスチック)になった。防水機能も従来は水中での使用も可能な「IP68」レベルだったが。3aでは生活防水レベルの「IP52」だ。また、バッテリーはこれまで対応していたワイヤレス充電機能を外した。

一方で3aには、これまでのピクセルシリーズにはなかったイヤホンジャックを搭載。「対象顧客がより一般的なイヤホンを使っていることを考慮した」(ラマチャンドラン氏)。

「ハードウェアのスペックは確かに落としたが、ソフトウェアの顧客体験を劣化させたくなかった。カメラのほかにも、セキュリティやバッテリーの性能は従来品と変わらない」とラマチャンドラン氏は強調する。購入後3年間は、アンドロイドなどのソフトウェアやセキュリティの最新アップデートをつねに受けられる。また15分間の充電で7時間の使用が可能な急速充電機能もこれまでのピクセルシリーズと同様だ。

高級スマホ市場の競争激化とともに、グーグルのピクセル事業は踊り場を迎えた。ハードウェアのスペックダウンをソフトウェアでカバーするという“力業”はグーグルらしいといえるが、高価格帯の従来製品と比較する消費者も少なくないだろう。その見劣りを価格差でカバーできるのか。ピクセル3aが背負った荷は重い。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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