令和初の参院選、安倍首相の勝敗ラインは? 自民党50議席割れなら首相の責任論が浮上

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このため、今回の勝敗ラインについて、与党の選挙責任者から「自公両党で改選過半数が最低限」(斎藤鉄夫・公明党幹事長)や「与党で安定多数以上」(甘利明・自民党選対委員長)との声が相次いだ。改選過半数は、与党が改選議席124の過半数となる63を獲得すれば、「現時点でも国民が政権を支持したと主張できる」(公明幹部)。また、安定多数は衆院で使われるもので参院に明確な指標はないが、「衆院にならう形で試算すれば、今回は与党で61議席以上」(選挙専門家)になるため、改選過半数の方が条件としてはやや厳しい。

これらを現状に当てはめると、「首相にとってかなり低めの勝敗ライン」(閣僚経験者)となるのは間違いない。非改選(121議席)では与党が70議席(自民56公明14)と過半数(62)を大きく上回っており、今回の「改選過半数」を実際の獲得議席数に落とし込むと、強固な組織を持つ公明が12~13議席と想定されているため、自民は50~51議席をとれば目標達成となる。

ただ、今回改選される6年前の参院選は、自民が現行制度で最多の65議席を獲得しており、与党改選過半数では自民が15議席前後の大幅議席減となる。これまでの参院選では二桁を超える議席減で首相の責任が問われたケースもあり、自民党内でも「今回50議席を割り込んで改選過半数に届かなければ、党内から首相の責任論が浮上して、政権がレームダック化する」(選対幹部)との声が少なくない。

改憲勢力3分の2獲得は困難

その一方で、自民党が56議席だった前回実績を上回れば、総数が減っても政治的には「勝利」となる。メディアも前回と同様に「自民勝利」と報道するのは確実だ。もちろん、60議席超ともなれば「自民圧勝」と書き立てることは間違いない。

これを、もう1つの指標となるいわゆる「改憲勢力3分の2」でみると、条件は厳しくなる。首相が悲願とする憲法改正の円滑な実現のためには、与党に加えて日本維新の会など改憲に前向きな勢力が今回の参院選後に「3分の2」に当たる164議席を上回ることが前提となり、そのためには今回選挙で改憲勢力が88議席を超える必要がある。

ただ、現状では維新以外の議席が見込みにくく、維新も7議席程度が上限とみられており、与党で80議席超、自民党でみれば67~68議席が必要となる。このため「余程のことがない限り、参院選後は現在の参院での改憲勢力3分の2は消滅する」(自民選対)との見方が支配的だ。

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