浮かれた株式相場が払うことになる巨額のツケ ますます行きすぎる楽観、現実は一段と悪化
ところが、同日は午前8時半(現地時間)にGDPが発表されたが、寄付きからしばらくは、前述の「インテルショック」で株価指数は下振れした。GDPについても、「在庫投資がGDPを押し上げた度合い(寄与度)が前期から拡大している」、つまり「それなりに生産高は膨らんだが、売れずに在庫に積み上がった度合いが大きくなっている、これはそれほど景気が良いと言える内容ではない」、との慎重な評価が優勢だった。株価指数が上振れを強めたのは、午後に入ってからなので、GDPの数値が株価を押し上げたとは理解しがたい。
つまり、先週末のアメリカの株価指数の動きは、インテルの収益見通しが、楽観に過ぎる投資家の見解をいったんは腰折れさせた。だが、これまで株価指数が上値追いをしてきたため、その株価の勢いに釣られた心理的な楽観が解消されず、「何となく大丈夫だろう」という投資家が午後から押し目買いを強めた、ということに過ぎなかったのではないだろうか。
すなわち「楽観論の勢いの尻尾」あるいは余勢が残っているだけで、実態面の裏付けを欠いていると考える。いずれ企業収益の減益という事実が、楽観の尻尾をつぶしにくるのではないかと懸念する。
アメリカの株式市場では、物色の広がりが弱い
またアメリカの株式市場で、物色の動きをみると、前述のように、 NYダウ、S&P500、ナスダック総合指数といった株価指数は強い。だが、より多くの銘柄から算出されているラッセル2000は、最高値から9%ほど下に位置する。つまり、幅広く多くの銘柄が買い上げられているわけではなく、特定の銘柄に買いが集中している状況だ。
さらに、好調に推移しているS&P500指数の中身を見ると、S&P500指数のなかに、バリュー指数(割安株指数)とグロース指数(成長株指数)というものがある。「バリュー÷グロース」の比率を計算してみると、2000年のITバブル期にならぶ低水準だ。
つまり、ITバブル期は、その名の通りIT株(当時の代表的なグロース株)ばかりが買われ、その行き過ぎが崩壊して全体相場が下落したという動きになった。今回もグロース株(いわゆるGAFA株などを含む)ばかりが買われている、という状況だ。GAFAなどの「花形銘柄」を、実態の裏付けを欠きながら、株価の勢いを頼みに買い上げよう、といった足元の物色の柱がそのうち力尽きて、ITバブル期と同様の結末に進めば、株価全般の大きな調整が生じかねない。
こうした「浮かれ相場」は、アメリカの株式市場だけではなく、社債市場でも目に付く。昨年末は企業収益に対する警戒から、社債が全般に売られていたが、株式市況の楽観と並行的に、目先の高利回りにも誘われて、企業の財務リスクを軽視した社債の買いが再発している。株式市場でも債券市場でも、「懲りない面々」による危険な物色動向が強まるばかりだ。
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