「社員の思いつき」を否定する会社がマズイ理由 「空気を読まない一言」が組織を活性化させる
少し前に、ラグビーの日本代表の五郎丸選手がキックの前に行う儀式(ルーティン)が話題になったことがありました。習慣的な儀式によって、メンタルが揺れ動かず、集中を高め、パフォーマンスが上がるということは、スポーツの分野ではたくさんの実例があるようです。
仕事の場合も、おそらく同じです。タイミングよく「思いつき」が出る人というのは、しっかりとした習慣を持っている人なんです。
「思いつき」が歓迎される職場と、そうでない職場というのがあります。その違いは、「会議」を見るとすぐにわかります。「思いつき」を気軽に口にする人がいない職場の会議は退屈で、憂鬱です。それも当然です。過去のデータや、それまでの話の流れに沿った「意味のある発言」ばかりだと、予想外の展開がどこにもないからです。
一方で、「今、思いついたこと」や「空気を読まないひと言」を平気で口にする人がいる会議は、楽しく、議論が活性化します。そして、そういう会議に出ている社員は、どんどん成長し、自信をつけていきます。
なぜなら、人は「なぜ、こんなことを思いついたんだろう?」と自分でも不思議になってしまうような言葉を発した瞬間に、本当の意味で「自分はやれるぞ!」という自信を持てるようになるものだからです。
「思いつき」が飛び交う会議は、人の自信を育む、最良の場なのです。
成果なんて気にしなくてもいい
「思いつき」が大事にされる場所というのは、言い換えれば、何を言ってもひとまずは否定されない、安心できる場だと言い換えてもいいでしょう。人はそうした、安心できる場を持たない限り、自信を育むことができません。
仕事というのは、わかりやすい成果が上がるときばかりではありません。そもそも、現代の人間の仕事はあまりにも細かく分業化が進んでいるので、自分の仕事がどこまで役立っているのか、どう成果につながっているのかということが、非常に見えづらくなっています。
成果が見えにくいなかで仕事をしていると、私たちはどうしても、焦ります。そうすると、売上など、目に見えやすい、わかりやすい指標で一喜一憂してしまうことになります。これでは仕事のなかで安心できる時間を持つことができず、「思いつき」を口にするゆとりがなくなってしまいます。
不謹慎に聞こえるかもしれませんが、本当の自信をつけたければ、成果が上がっても、成果が上がらなくても大丈夫なんだと、心から安心できる部分を自分の中に持っておくことが必要なのです。
以前、旅先で会津磐梯山の姿を見たとき、僕はなんだか、心の底があったかくなるような、ほっとする感覚を覚えました。磐梯山の雄大な稜線を眺めていると、なんだか仕事がうまくいこうと、うまくいかなかろうと、たいしたことではない、というゆとりの感覚が生まれたのです。
故郷の景色、子供の頃に行った海水浴のときに浴びた太陽の日差し……、誰もが心のどこかに心から安心できる場所を持っているはずです。自分自身が安心できる場所を心の中に持っておくこと。それがあると、目先の成果にとらわれずに「思いつき」を口にできるようになります。実はそれこそが、「自信」を手にするいちばんの近道なのかもしれません。
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