「社員の思いつき」を否定する会社がマズイ理由 「空気を読まない一言」が組織を活性化させる

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しかし、残念ながらこうした上司・部下の関係性の中では、いくら仕事をしても、いくら成果を積み上げても、部下は自信をつけることができません。

なぜなら、こうした関係性の中では、部下は「ああ、この上司は、自分でもできそうなレベルの仕事を選んで私に与えているのだ」ということを、どこかで感じ取ってしまうからです。これでは、いくら成功体験を積んだとしても、なかなか「自分はやれる!」という確信に満ちた自信を持つことはできないでしょう。

「自分はやれる!」という自信をつけたければ、「言われたこと」だけをやるのではなく、自分で考え、自分で工夫する瞬間が不可欠です。この仕事は、自分がやりきったのだ、という感覚が、自信を育んでくれるのです。

現代人は「自信を持てない環境」にいる

「自分でやりきった」という感覚が、自信を育んでくれる。かつての職人や、小規模な農業では、自然と自分で考え、自分で工夫する場面があったので、仕事の中で自然と一人ひとりが自信を育む機会がありました。

しかし現代の会社組織における仕事では、なかなか自分で考え、自分で工夫する裁量を与えられる機会がありません。そう考えると、現代のような大きな会社組織の中で、いかにして自信を育むかということは、実は意外に困難な課題だということができるでしょう。

私がよくお伝えしているのは、実際に試行錯誤や創意工夫をする機会がなくても、仕事のなかで自分なりに「思いつく」ということを大切にする、ということです。

例えば、「明日までにAという書類を仕上げておいてください」という仕事を頼まれたとします。もしもマニュアルに従って、それまでとまったく同じ手順で、ほとんど同じ書類を仕上げただけでは、いくら仕事をこなしても、なかなか自信はついてきません。

それに対して、同じ仕事を命じられたとしても、「この書類の書体はこっちのほうが読みやすいんじゃないか」「この文面は、こうしたほうが説得力があるんじゃないか」という、自分なりの改善や工夫を思いつくことができれば、その人は着実に成長していきます。

実際には、せっかく思いついた改善や工夫も、職場のルールや上司の指示のために、実行に移せないこともあるでしょう。でも、そうやって「思いつく」ということ自体が確実にその人の力となり、自信となるのです。

この場合の「思いつく」は、なにも「前代未聞の大発見」である必要はありません。日々の業務の中でのちょっとした思いつきであっても十分です。

以前、行きつけの喫茶店に行ったときのことです。僕はそのとき外食が多くて、ちょっと野菜が不足気味で、ふと「スムージーが飲みたいな」と思いました。その店のメニューにスムージーがないということは知っていたのですが、駄目でもともと、店員さんに聞いてみました。するとその店員さんはちょっと考えて、こう答えてくれました。

「すいません、スムージーはご用意できません。でも、お野菜のサラダはご用意できます。サラダのドレッシングにはレモンが入っていて、さっぱりしていますが、いかがですか?」

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