ジャカルタ地下鉄開業、薄い「日本」の存在感 記念式典で大統領は一言も「支援」に触れず
日本から見ると、MRTJ南北線はあたかも国際貢献でつくられたかのように思いがちだが、インドネシア側からすればもっとビジネスライクな話である。あくまでも日本側は受注者でインドネシア側こそが発注者なのだ。
期日どおりに商品を納入し、インフラを整備し、そして車両を走らせること、それが受注企業に課せられた義務である。だから、インドネシアが日本に感謝する義理などないのである。この発想はMRTJ社の幹部の態度にも顕著に表れている。
開業時期は、相次ぐ設計変更や切羽詰まった状況の中で前倒しされた。一時はアジア競技大会に絡み2018年内の開業論まで飛び出したほどだが、結果的には2019年3月で落ち着いた。それでも2カ月ほど本来の開業時期よりも早まっている。このような無理な開業スケジュールに見事に応えたのは、よくも悪くも日系企業の底力である。
日本は存在感を示せるか
円借款案件は、ただでさえ赤字か黒字か限界のラインでの安値受注である。相手がどう思っていようが、実態は国際貢献ボランティアに近いものがある。いわゆる「上物」と呼ばれる鉄道本体に関わる企業にとっては、本来であればこの受注をきっかけとしてその後の追加受注や、他のプロジェクトでの採用にもつながるような枠組みでなければ旨みはない。
少なくとも、車両を納入したのなら、その後のメンテナンスや部品供給まで含めたパッケージにしなければならない。年度予算消化型・ハコモノ整備偏重型の開発援助から脱却し、より長期的視点に立った新たなスキームの策定は急務だ。
まもなく、MRTJ南北線第2期事業についての入札が始まる。そこに出る顔ぶれから、今回開業した第1期事業に対する企業の評価が見えてくることになるだろう。わが国の「パッケージ型鉄道インフラ輸出」に対し、企業はどのようなジャッジを下すのか。
4月17日には大統領選挙が実施され、開票速報によれば、ジョコウィ氏の再選がほぼ確実となった。MRTJ南北線第1期事業の成功とともに、今後のジャカルタ首都圏でのさらなる鉄道整備には追い風となる。そんな中で、日本は今後のMRTJ東西線、さらにその先の都市鉄道網整備にどれほどの存在感を示すことができるのだろうか。
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