ますます難しくなる安倍政権の財政運営 2014年度予算案 国債費の膨張に歯止めかからず

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そもそも、2014年度予算案でも税収が増えたわりに国債の新規発行額が減らなかったのは、国債費が増加したから。つまり、これまでに発行した国債の利払いや償還費用が足を引っ張っているのだ。

すでに国債費の管理は難しくなってきている

よく知られるように、日本の財政を圧迫しているのは、医療や介護、年金など高齢化で増え続ける社会保障費。だが、前年度比での歳出増加額を主要経費別に見てみると、国債費は1兆円で、社会保障費の1.4兆円に次ぐ。やり玉に挙がることの多い公共事業費6832億円と比べても、1.5倍もの増え方だ。

「毎年1兆円」といわれてきた社会保障費の自然増は、2014年度に関していえば6000億円程度。自然増という意味では、国債費がすでにナンバーワンの財政悪化要因になっている。

一般会計予算を見れば、国債費だけで23.2兆円と全歳出の約4分の1を食われ、うち利払い費だけで1割を使い果たす状況だ。一方の歳入サイドは公債金が41.2兆円。毎年半分近くを国債発行(借金)に頼り、借金が積み上がる構図から抜け出す見通しはまったく立っていない。日本銀行による異次元緩和によって異例の超低金利がこのまま続いたとしても、政府債務の総額が増えるにつれて国債費は自動的に膨れ上がっていく。

さらに問題なのは今後、金利にも上昇圧力がかかってくる可能性が高いことだ。経済再生・デフレ脱却を目指す安倍政権は物価上昇率2%を目標に掲げ、緩やかなインフレを起こすとしている。今後、意図したとおりに物価上昇が本格化していくとしたら、金利も上がるのが通常の姿だ。

確かに足元では、日銀による国債の大量購入によって国債市場が事実上、機能不全に陥っているため、10年債の利回りは0.7%程度と低位安定。金利が上昇基調にある米国やドイツとは対称的な状態が続いている。とはいえ、日銀も永遠に国債の大量購入を続けることはできないだろう。いずれは、米国のQE(量的緩和政策)縮小が問題になっているのと同じく、日本でも異次元緩和の出口論が国債市場の波乱要因となるはずだ。

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