不登校→東大進学した男性が親に感謝するワケ 息子のために引っ越しもした

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その後は、ちょっと気分が合わない日に月1回程度、休むことがあったものの、基本的には学校に通っていました。

そして、受験を経て、中高一貫の進学校へ進学。東京大学に現役で合格し、卒業後は銀行、インターネット企業を経て、リクルートに入社。

現在は、不登校の子どもが通う名古屋市の適応指導教室などで、タブレットを使ってオンライン学習ができる教材「スタディサプリ」を用いた学習支援事業のプロデューサーをしています。

自分の経験を役立てたい

このタブレット教材「スタディサプリ」は、まわりに知られずに、自分がわかるところから勉強を始められる利点があります。

わかりやすく説明された授業動画もあり、中学校3年生が小学校高学年のつるかめ算的なところから学ぶこともあれば、アルファベットのABCから始める子もいます。

僕自身の経験からも、不登校直後に自分と向き合うのはつらいことで、さかのぼって勉強しようという気にはなれませんでした。

けれども、なんらかのきっかけでエネルギーがたまり、学習に向き合えるフェーズになったとき、自分のペースで勉強でき、授業動画で過去にさかのぼって学習することができる教材は、不登校の子の心強い味方になり得ると考えています。

もちろん、事業として学習支援に取り組むことの難しさも感じています。大きく利益を上げられる領域でもありませんが、持続可能な支援ができるよう、ロマンとソロバンをどう成り立たせていくかを考えるのも、僕の重要な仕事だと思っています。

学習支援の目的は、学校へ行きたいけれど、行くことができず勉強をしていない、その負い目をやわらげることです。短期的な学力向上ではありません。

ただ学習と向き合うことで、わからないことがわかるようになる喜びを知ることもできます。さらには自己肯定感を高めるきっかけのひとつにもなります。それは僕自身の経験からも言えることでした。

内向的で学校の休み時間には自分の席で鉛筆を削るか、文庫本に目を落としていた自分と今の自分は、本質的には何も変わっていません。

けれども、奇跡の一つひとつが結びつき、結果として不登校の子どもたちと関わる仕事ができる今、こんなに幸せなことはないと思っています。

(聞き手・小山まゆみ)

森崎 晃(もりさき あきら)1986年名古屋市生まれ。不登園、不登校を経て、東京大学入学。卒業後、銀行、インターネット企業を経て、リクルートに入社。現在はタブレット教材「スタディサプリ」を用いた学習支援事業に携わっている。

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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