高学歴社会が生み出す韓国「N放世代」の不幸 政権転覆の巨大なエネルギーを生みかねない
高度経済成長時代を経た日本でも東京一極集中という同じような問題が起きているが、日本通でもあるこの総長は、「日本には東京のほか、大阪、京都、名古屋など地方都市にも有名な大学があり、優秀な学生が分散して進学している。ところが韓国ではソウル以外に有名校があまりなく、すべてソウルが中心なのです」と語る。
大統領制の韓国では多くの権力が大統領に集中する。そうしたシステムがもたらす空気が社会にも反映されているのか、若い人たちは情報や活力などにあふれるソウルの大学に行かなければ、自分たちは将来豊かになれないと危惧しているのかもしれない。
その危惧が、激しい受験競争につながっている。日本の大学入試センター試験に当たる「大学修学能力試験」の日、何らかの事情で遅刻しそうになった生徒を乗せた白バイが市街地を走る映像は恒例行事になっている。
高い大学進学率が就職率を低下させる
ところが、この高い大学進学率とソウルへの過度の集中が、皮肉にも大学卒業生の就職率の低下を招いているというのだ。全国紙の1つである中央日報によると、4年制一般大学の平均就職率はこの4年間で64.5%から62.6%に下がった(1月22日付)。
名門校で知られるソウル大学、高麗大学、延世大学の卒業生の就職率も7割を切っているというのであるから尋常ではない。3人に1人が就職できないというのは、大学にとっても親にとってもかなり深刻な問題である。
就職率が低い原因は、大学生の要望と企業の需要のミスマッチである。首都圏の大学卒業生はもちろん、地方大学の卒業生も財閥企業を筆頭に大企業への就職を求めてソウルに集まってくる。そうなると企業側の求人数が学生の要求をすべて満たすわけはない。多くの学生が満足できる就職先を見つけ出せないまま卒業するか、意図的に単位を残して大学に留年し、就職活動を継続するという。
一方でソウル以外の地方企業には求人を満たせないところもあるという。学生がソウル以外の企業への就職を希望すればもう少し就職率は上がりそうだが、冒頭に紹介したように学生の希望はソウルに集中している。韓国全体の失業率は4%ほどだが、20代の失業率が約10%と突出して高いのは、こうしたミスマッチが一時的な現象ではなく構造的な問題になっていることを示している。
先の大学総長は、「大学を卒業した若者は、自分たちは大卒にふさわしい仕事をすべきであると考えて、ブルーカラーの仕事は大卒のやることではないと拒む傾向がある。その結果、ブルーカラーの労働者が足りなくなっており、多数の外国人労働者が埋めている」と解説する。
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