高学歴社会が生み出す韓国「N放世代」の不幸

政権転覆の巨大なエネルギーを生みかねない

韓国では大学受験者をテスト会場に送るため、白バイ警察官が送り届けるケースも(写真:EPA=時事)

学歴が高ければ幸せな人生を送ることができるというのは世の中の常識のようだが、それを裏切るような現象が韓国で起きている。日本では徴用工判決や慰安婦など歴史問題をめぐる対立ばかりに焦点が当たっている韓国だが、抱えている問題は日韓関係だけではない。

ついに1.0%を切ってしまった合計特殊出生率、50%を超えた成人男性の未婚率の高さ、10%を上回る若い世代の失業率と、若者世代は今、踏んだり蹴ったりの状況に置かれている。こうした問題の背景にあるのが皮肉にも、主要先進国に比べて突出して高い韓国の大学進学率だというのである。

どの大学でもいいから、ソウルを目指す

韓国の大学進学率は1980年代には20%台だったが、特に金大中大統領時代に積極的に取り組んだ結果、1990年代後半から急速に上昇し、2008年ごろには約80%を記録した。2年制の専門学校が次々と4年制の大学に転換されたことも進学率を高めた理由だという。その後は少し落ち着き、最近は70%前後が続いているが、それでもOECD諸国の平均値である約6割に比べるとかなり高い。

その結果、韓国では高学歴信仰がかなり定着してしまったようで、筆者の知人である韓国の大学教員は、「学士(大学卒)でなければまともに結婚できないという空気が社会に生まれている」という。ところが高い大学進学率が予想外のことを引き起こした。

先日、韓国の複数の地方大学を訪問する機会があった。訪問先のある大学の総長が次のような話を紹介してくれた。

「韓国では今、大学受験を控えた若者の間で、“in Seoul”という言葉がはやっている。どの大学でもいいから、とにかくソウルに行かなければ負け組になってしまうという意味です」

「若者の夢は、ソウルの大学に合格して卒業し、ソウルの企業に就職し、ソウルで家庭を築き子どもを作り、ソウルで一生を暮らすこと。彼らの多くは出身地に戻ることを決して考えないのです」

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